新型コロナ感染症の拡大により、世界経済は大きな影響を受けている。そのような中で紛争も起き、将来への不安や不確実性が高まる中で暮らすことが日常的な状況にある。このような中で四半期別GDPは経済活動の状況を確認できる重要な統計である。GDP1は様々な統計情報を集約して作成されており、しかも速報時点では全ての情報が利用できない。そのため、時間の経過とともに、欠落していた情報が反映されてGDPは改定される。しかし、大きな経済ショック時にはGDPが必要とする情報の欠落がより多くなる可能性がある。このような状況をJordà et al [2020]は「霧が濃くなる」と指摘している。
経済ショックの場合、それを起因とする劇的なGDPの落ち込みは、経済ショックの大きさを実感として体験した後に公表されることから、大きなマイナスの数値が公表されても大きな驚きをもって評価されることは少ない6。問題なのは回復過程である。経済ショック時の回復の速度を誤って判断すると、政策的なサポートが軽減あるいは中止される可能性がある(Jordà et al [2020])。
他方で、アメリカ、イギリス、Euro及びオーストラリアとも平時の改定は日本の半分程度(0.29%~0.17%)にとどまっている。ただし、これらの地域でもオーストラリアを除き、経済ショック時には改定が大きくなっていることが分かる。Jordà et al [2020]は、リーマンショック時のアメリカのGDPの改定状況をもとに、経済的な苦痛が厳しい時期にはGDPの改定が大きく、当時の経済見通しを曇らせた可能性があるとしている。