1|本報告書の位置付け
資本アドオンの使用に関する報告書は、ソルベンシーII指令第52条 (3) 項に従い、EIOPAが公表する年次報告書であり、異なる加盟国の監督当局間における資本アドオンの使用に関する監督上のコンバージェンスの程度を欧州議会、理事会及び欧州委員会に報告するためのものである。
2|本報告書の分析
本報告書の分析は、2020年に欧州経済領域(EEA)30カ国の単独会社又は保険グループに対して設定された資本アドオンを対象としている。
本報告書の分析は、EEA 30カ国の2,447の単独会社と326の保険グループから提出された2020年末の定量的報告テンプレート(QRT)に基づいている。加えて、EIOPAはNCAsに対する調査を開始し、資本アドオンの使用に関する定性的及び定量的な質問を行っている。また、定量的な部分については、個別会社又はグループごとに設定された資本アドオンの数及び資本アドオンを設定した理由(QRTには記載されていない)に関する情報を求めている。
3|資本アドオンに関する開示
ソルベンシーII指令第31条及び委任規則の附属XXIに関連しての第316条によれば、資本アドオンを設定するNCAsは、特に以下を開示しなければならない。
・指令2009/138/ECに基づいて監督される全ての保険及び再保険会社に関する、資本アドオンの数、SCRのパーセンテージとして測定された、会社当たりの平均資本アドオン及び資本アドオンの分布
・資本アドオンの適用に使用する基準、及びその計算及び削除の基準
ソルベンシーII令第51条 (2) によれば、加盟国は、ソルベンシー財務状況報告書(SFCR)の中での毎年設定される資本アドオンの各保険会社及び再保険会社による開示を、一時的に制限するオプションを行使することができる。
2020年12月以降、会社及び保険グループは、パブリックベースで毎年、資本アドオンに関する情報提供が義務付けられた。これは、2020年12月末以降の会計年度末を対象とするSFCRs、すなわち、市場の大半として、2021年末を対象とし、2022年に公表されるSFCRsが、最初に資本アドオンに関する情報を有することが予定されることを意味している。
2020年12月のSFCRsを確認すると、次のようになっている。
a) 9つのSFCRsのうち7つは、資本アドオンが開示されている。
b)資本アドオンを有する1つの会社は、SFCRに資本アドオンを開示していない。
c)資本アドオンを有する1つの会社は、清算中のため、SFCRを開示していない。
EIOPAは2020年におけるこの開示に留意し、特定されたいかなる問題についても、それぞれのNCAsにフォローアップを行うとしている。
4|本報告書の結果概要
過去数年間に資本アドオンを設定した2つのNCAsは、2020年には資本アドオンを設定しなくなった。こうした状況を受けて、2020年末に設定された資本アドオンは2019年よりもさらに減少した。2020年には、7つのNCAsが、生命保険会社3社、損害保険会社6社の合計9社の単独会社に対して、資本アドオンを設定した。
2019年には、9つのNCAsが、生命保険会社2社、損害保険会社7社、生損保兼営会社1社を含む合計10社の単独会社に対して、資本アドオンを設定した。グループについては、2019年と同様に、2020年中に資本アドオンは設定されていない。
単独会社の場合の適用ケース別内訳は、以下の図表の通りとなっている。
9社のうち7社がソルベンシーII指令第37条 (1)aに基づくものとなっており、残りの2社は第37条 (1)cに基づくものとなっている。