中国経済:生産者・消費者物価の動向(2021年10月)~生産者物価上昇が消費者物価を押し上げへ

2021年11月11日

(助川 啓太)

1.エネルギー価格上昇を背景に、生産者物価は上昇基調が続く

2021年11月10日の中国国家統計局の発表によると、10月の生産者物価指数(PPI)は、前年同月比13.5%上昇となり、9月の同10.7%上昇を2.8ポイント上回った。10月の消費財は同0.6%である一方、生産財は同17.9%となり物価上昇の牽引役となっている。(図表-1)

上昇幅の大きい生産財の内訳をみると、採掘工業が前年同月比66.5%上昇、原材料工業が同25.7%上昇、加工工業が同10.8%上昇となった。国際的な原油価格の上昇や、石炭の需給ひっ迫による燃料価格上昇を背景に、生産者物価が押し上げられている。(図表-2)

2.消費者物価も生産者物価に追随し、上昇へ

消費者物価の動きも景気動向と密接な関係があるため、生産者物価と併せて確認する必要がある。
2021年11月10日の中国国家統計局の発表によると、10月の中国の消費者物価は前年同月比1.5%の上昇となり、9月の同0.7%を0.8ポイント上回った。9月までは下降基調であったが10月は上昇に転じた。前月比でみると、10月は0.7%の上昇となり9月の同0.0%を0.7ポイント上回った。(図表-3)
図表-4、5に示した消費者物価の内訳をみると、10月の食品とエネルギーを除くコア部分の上昇率は前年同月比1.3%上昇で、9月の同1.2%を0.1ポイント上回った。なお前月比では、0.1%上昇した。

さらに品目別にみると、豚肉は季節的な消費需要増加や備蓄用在庫に回されたことなどから、前月比ではマイナス幅は減少するも、前年同月比では44.0%下落した。また、天候不順を背景に生鮮野菜価格は同15.9%上昇し、食品価格全体では同2.4%の下落となった。

消費品(モノ)とサービスの対比でみると、10月の消費品(モノ)は前年同月比1.6%上昇となり、9月の同0.2%上昇を1.4ポイント上回った一方、サービスは同1.4%上昇で9月の同1.4%上昇から横ばいとなった。2021年6月以降、消費品(モノ)の価格は下落基調であったが10月に上昇へと転じた一方、サービスは2021年8月以降下落基調が続いており、消費品とサービスでは異なる動きを示している。

生産者物価の上昇を背景に、中国の一部の食品メーカーでは、調味料や冷凍食品の値上げへと動いている。企業が価格転嫁を行うことで消費者物価が上昇すれば個人消費を押し下げる可能性もある。減速傾向にある中国経済では、消費低迷は避けたいところであり、今後の物価動向に注視が必要である。
 
 

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