第3波では、新規陽性者数の増加や緊急事態宣言の再発令により、2021年2月15日に指数は48%まで低下した。ただし、新規陽性者数の急増と比較して、指数の低下幅は小さかったと言える。一方で、新規陽性者数が減少に転じた後でも、緊急事態宣言期間は指数の回復スピードが穏やかであった。一部の企業では、新規陽性者数が減少しても宣言期間中はオフィス出社を抑制する方針を維持したためだと考えられる。
第4波では、新型コロナウイルス変異株の感染拡大への警戒感から、まん延防止等重点措置に続いて、2021年4月25日に3回目の緊急事態宣言が発令されたため、6月4日には一時46%まで低下した。その後、新規陽性者数が減少に転じ、6月20日に東京などの緊急事態宣言が解除されたことから、6月下旬には50%台後半に上昇した。
第5波では、東京2020オリンピックが、感染拡大の最中である2021年7月23日から8月8日に開催された。同期間中のオフィス出社率は平均50%と、開催直前1週間の平均53%から小幅の低下にとどまった。その後、デルタ株の拡大により8月19日には東京都の新規陽性者数が7日移動平均で過去最大の4,774人にまで急増したため、8月27日には45%まで低下した。その後も50%を下回る状態が継続したが、9月中旬に東京都の新規陽性者数が1千人を割り込む水準まで減少したことで50%を回復した。そして、9月30日に緊急事態宣言が解除されると、10月1日に令和3年台風16号が接近したことで一時的に42%まで急低下したことを除けば、10月以降は55%~60%程度で推移し、10月末時点(10月29日)で60%となっている。
このように、政府の感染拡大防止策や感染動向を睨みながら、第2波以降、オフィス出社率指数は45%~65%の範囲で推移した。また、この間のオフィス出社率指数の推移には、以下の2つの特徴を確認することができる。
1つ目の特徴は、緊急事態宣言中は、新規陽性者数が減少してもオフィス出社率指数の上昇は小幅にとどまることである。これは、宣言中でも感染拡大がピークアウトすると、人出が増加する傾向にある商業施設と異なる特徴である。一部の企業では、オフィス出社方針を新規陽性者数の増減ではなく緊急事態宣言の有無に紐付けて決定しているためだと考えられる。
2つ目の特徴は、新規陽性者数の増減や政府の感染拡大防止策に対するオフィス出社率の感応度が、第2波以降低下したことである。これは、新型コロナウイルス感染症への理解が進み、ウイズコロナにおける働き方の模索がある程度進んだためだと考えられる。
一方、ワクチン接種が進展し、新規陽性者数が急減したにもかかわらず、足元のオフィス出社率指数の回復は鈍い。その要因としては、感染再拡大による第6波への警戒感が強いことが挙げられる。また、一部の企業が、すでに在宅勤務を取り入れた新しいワークスタイルに移行したことで、オフィス出社率が構造的に下押しされている可能性がある。
2 東京のオフィス出社率は、三幸エステート「オフィスレントデータ2021」における東京都心部の定義に準じて、東京都心5区主要オフィス街および周辺区オフィス集積地域を対象とする。
3――顕在化し始めたオフィス再構築の動き