ユーロ圏失業率(2021年8月)-失業率は4か月連続で低下し7.5%に

2021年10月01日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:失業率はさらに低下

9月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2021年8月、季節調整値)】
失業率は7.5%、市場予想1(7.5%)と同じで、前月(7.6%)から改善した(図表1)
失業者は1216.2万人となり、前月(1242.3万人)から26.1万人減少した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:雇用環境の改善は継続

ユーロ圏の8月の失業率は7.5%と前月の7.6%から低下した。また、前月までの改定値もほぼ変更がなかった。

失業者数は8月の前月差で26.1万人減となり、減少幅は縮小傾向にあるが、4月以降の減少数は4か月合計で118.8万人と大幅に改善、失業者数の水準は2019年の水準(年平均1,242.4万人)より低くなっている(図表1・4)。失業率もほぼコロナ禍前の水準まで回復している。

8月の若年失業率は16.4%と前月(16.7%)から改善した。若年失業率の改定値は7月(改定前16.5→改定後16.7%)、6月(17.2→17.3%)、5月(17.9→18.0%)と足もとでは悪化方向に改定されているが改定幅は小幅で、8月の数値はコロナ禍後(20年4月以降)の最低値を更新している。ただし、若年失業率をコロナ禍直前の水準と比較すると、まだ高めの状態にある(図表2)。
国別の8月のデータを見ると、19か国中悪化が2か国、改善が12か国、横ばいが5か国だった。また、若年失業率では公表されている16か国中悪化が6か国、改善が9か国、横ばいが1か国となった(図表5・6)。全体として見れば改善しているが、フランスなど若年失業率が悪化している国も一定数見られる。
最後に詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、イタリア・ポルトガルともに8月には失業者と就業者が減少する一方で、非労働力人口が増加している(図表7・8)。失業率はイタリア、ポルトガルともにコロナ禍前の水準まで低下、労働参加率はイタリアがコロナ禍前と比較してまだ低い一方で、ポルトガルではコロナ禍前の水準をやや上回っている。特にポルトガルにおいて雇用環境の改善が進んでいると見られる。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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