欧州大手保険Gの2020年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-

2021年05月26日

(中村 亮一) 保険計理

(3)新契約マージン(対PVNBP)の地域別状況
新契約価値(NBV)、新契約保険料現在価値(PVNBP)及び新契約年換算保険料(APE)の地域別内訳は、以下の図表の通りとなっている。
新契約マージン等の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約マージンは、アジア・太平洋で高く、フランス、スイス等では相対的に低くなっている。

2019年との比較では、欧米各国では主として低金利の影響を受けて、低下しており、特にフランスやイタリアは商品構成の悪化もあり、それぞれ1.4%から0.8%、2.4%から1.7%へとさらに水準を低下させた。これに対して、アジアは商品構成の改善もあり、5.7%から5.8%へと若干上昇した。
(参考)営業利益の商品タイプ別内訳
営業利益の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りで、保有ベースでは引き続き、保証付貯蓄・年金の構成比が5割程度となっている。
3|Generali
(1)全体の状況
2020年の新契約価値(NBVは、2019年に比べて4.4%(比較ベースでは、4.9%、以下同様)増加して、18.56億ユーロとなった。これは収益性の高い保障やユニットリンク商品のウェイト増加と耐性力のある貯蓄商品の収益性との複合効果による。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2019年に比べてのさらなる低金利下にも関わらず、0.05%ポイント(0.06%ポイント)増加して、3.94%となった。これは、(保障及びユニットリンク契約のさらなる成長を伴う)商品構成の改善と、金利の急激な低下による影響を相殺する貯蓄契約の新商品の機能の継続的な強化との組み合わせが成功したことによる。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、0.8%ポイント(0.8%ポイント)増加して、39.7%となった。

2019年に比べて、新契約保険料現在価値(PVNBPは3.1%(3.3%)増加して470.91億ユーロとなり、新契約年換算保険料(APEは2.2%(2.7%)増加して46.71億ユーロとなった。これは主として、ドイツとイタリアの好調がフランスにおける低迷をカバーし、保障とユニットリンクの成長によって大きく支えられた結果による。

なお、新契約IRR(内部収益率)は、2.1%ポイント増加して22.3%となった。これは、初年度経費負担の低下が算出のためのリアルワールドの金融前提の低下を上回ったことによる。
(2)新契約の商品タイプ別、地域別の構成比
Generaliは、欧州において金利低下が進む中で、イタリアやドイツを中心に、保証利率の引き下げに加えて、無保証等の低資本集約商品のウェイトを高めてきている。

新契約の商品タイプ別、地域別の構成比については、以下の図表の通りとなっている。

グループ全体での商品タイプ別の内訳は、貯蓄が44%(2019年は52%、以下同様)、保障が24%(20%)、ユニットリンクが31%(26%)となり、2019年に比べて貯蓄のウェイトが大きく低下した。
(3)新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況
新契約保険料現在価値(PVNBP)、新契約価値(NBV)及びその比率としての新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。

新契約保険料現在価値(PVNBP)、新契約価値(NBV)については、ユニットリンクが大きく進展したが、貯蓄はマイナス進展だった。

新契約マージン(対PVNBP)については、保障が7.47%と高く、ユニットリンクが3.49%で続き、貯蓄は2.33%となっている。2019年との比較では、貯蓄で上昇したが、保障とユニットリンクでは低下した。
(4)新契約マージンの地域別状況
新契約マージンとIRR(内部収益率)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

構成比は低いものの、中東欧の新契約マージンが高くなっている。親会社国イタリアの水準がグループ全体より高い一方で、フランスのマージンやIRRは他の国・地域に比べて低い水準となっている。フランスにおいては、COVID-19の影響による医療保障の請求の増加も影響している。
(参考)元受保険料の商品タイプ別内訳
元受保険料の商品タイプ別内訳は、次ページの図表の通りで、保有ベースでは引き続き、貯蓄・年金の構成比が5割以上となっている。2019年から2020年にかけては、ユニットリンクの構成比が上昇して、貯蓄・年金の構成比が低下した。

なお、低資本商品の責任準備金の比率は2018年の56.7%、2019年の60.5%に対して、さらに上昇して62.7%となった。
4|Aviva
(1)全体の状況
2020年の新契約価値(NBVは、2019年に比べて2.9%増加して、12.60億ポンドとなった。これは、主として英国における年金・エクイティリリースの販売好調による。

新契約マージン(New Business Margin(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、商品構成の改善等を反映して、2019年から0.2%ポイント上昇して2.9%となった。

新契約保険料現在価値(PVNBP)は、2019年に比べて5.1%減少して、433.58億ポンドとなった。いくつかの市場からの撤退やCOVID-19によって引き起こされた市場変動等の不確実性の影響を受けて、貯蓄・退職商品の販売が影響を受けたこと等による。
(2)新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別内訳(英国)
英国とアイルランドにおける生命保険事業の新契約価値(NBV)、新契約保険料現在価値(PVNBP)及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りとなっている。

新契約価値(NBV)は、貯蓄・退職や保障・医療ではほぼ横ばいだったが、年金・エクイティリリースが大きく増加(その構成比も53%に上昇)したことから、全体でも増加した。

新契約保険料現在価値(PVNBP)も、貯蓄・退職で減少し、年金・エクイティリリースで大きく増加したが、全体ではほぼ横ばいだった。

新契約マージン(対PVNBP)は、年金・エクイティリリースが4.6%から4.7%に上昇したことから、全体でも2.1%から0.2%ポイント上昇して、2.3%となった。保障・医療等は6.8%で引き続き相対的に高い新契約マージン(対PVNBP)を維持している。
(3)新契約マージン(対PVNBP)の地域別状況 
新契約価値(NBV)及び新契約保険料現在価値(PVNBP)の地域別内訳は、以下の図表の通りとなっている。

英国&アイルランドでは進展しているが、Manage-for-valueでは市場からの撤退の動きを反映して大きく減少している。
新契約マージン(対PVNBP)の地域別状況は、以下の図表の通りとなっている。

地域別では、ポーランド等の新興国での新契約マージン(対PVNBP)が高くなっている。一方で、英国&アイルランドの水準は、欧州(英国以外)と比較しても低い。
(参考)営業利益の商品タイプ別内訳
英国生命保険事業の営業利益の商品タイプ別内訳は、以下の図表の通りとなっている。

新契約価値とは異なり、2020年は貯蓄&退職が大きく増加したが、年金・エクイティリリースや保障&医療は減少した。

なお、2020年のグループ全体の営業利益のうち、年金・エクイティリリースが43%を占めている。
レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)