2|患者は医師の指示通りの服薬と感染症対策が不可欠
膠原病は、患者の症状などによって、治療内容が異なることが特徴といえる。したがって、薬剤の服用などを通じた日常生活も患者によって異なる。ここでは、患者が日頃から心がけるべきとされる点を、3つみていく。
(1) 薬の服用は医師の指示に従って正しく行う
膠原病の治療の主役は、薬剤療法である。一般に、医師からは、ステロイド薬、免疫抑制薬、分子標的薬、免疫調整薬など、いくつかの医薬品が処方される。医薬品ごとに、服用する量やタイミングの指示は異なる。そこで、医師の指示に従って、正しく服用することが薬剤療法の基本となる
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何ヵ月にも渡る治療期間中に、治療薬が変更となることがある。使用していた医薬品が効かなかったり、副作用が強かったりしたために、別の薬に変更する判断を医師が行ったケースだ。変更があった場合は、外来診療の際に、医師に質問してみることで、患者の理解が高まるものと考えられる。
患者は、もし、薬を飲み忘れたときは、医師にそのことを報告する必要がある。飲み忘れの報告がないと、医師は、使用した(はずの)医薬品に効果がなかったと判断して、治療薬の変更をしてしまいかねないためだ。
また、患者が自己判断で服薬を中止したり、量やタイミングを変えたりしてはいけない。治療薬のなかには、免疫抑制薬のように、服用を始めてから効果があらわれるまでに1~3ヵ月程度を要するものもある。量やタイミングを変えると、治療薬の効果が出なかったり、副作用が出てしまったりすることもある。医師の指示に従って、しっかりと服薬することが、治療の基本である。
(2) 感染症対策をとる
膠原病は、自己免疫疾患である。免疫を抑えることが、治療の手段となる。免疫抑制薬等により、免疫機能を抑制すれば、それだけ感染症にかかりやすくなる(易感染)。したがって、治療にあたって、感染症に注意することが必要となる。
具体的には、うがい、手洗い、マスク着用により、鼻や口を通じたウイルス感染等を防ぐ。ケガをしたときには、傷口からの病原体の侵入を抑えるために、洗浄や消毒をしたうえで、絆創膏などで傷口を覆う。食中毒予防として、食品の冷蔵保存や加熱処理を徹底する。といったことがあげられる。
また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなど、ワクチンがある感染症については、積極的に、その予防接種を受けることも大切とされる
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(3) 健康診断とがん検診・歯科検診を受ける
通常、膠原病の患者は、外来診療時にさまざまな検査を受ける。したがって、改めて健康診断を受ける必要はないのでは? と考える患者も出てくる。しかし、健康診断で全身の状態をチェックすることで、外来診療時の見落としのリスクを減らすことが可能となる。健康診断は、受けるべきといえる。
特に、胸部レントゲン撮影や、便潜血・大腸内視鏡検査、胃内視鏡検査、マンモグラフィなどの、がん検診は、定期的に受けておくことが求められる。
また、膠原病の治療では、骨粗鬆症治療薬を併用することがあるが、それに伴って顎の骨が壊れていく顎骨(がっこつ)壊死が生じることもある。このため、歯科検診を受けて、虫歯や歯周病を予防することも必要となる
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51 治療歴を整理するために、いつどういう薬を飲んだかをノート等にまとめておくことも有効とされる。
52 ただし、投与中の膠原病治療薬によっては、接種するタイミングに配慮が必要な場合もある。このため、外来診療時に、医師に確認しておくとよいとされる。
53 その他、シェーグレン症候群(SS)では、口腔の乾燥(ドライマウス)により、口腔内の感染リスクが高まるため、定期的な歯科検診が必要とされる。
6――指定難病と医療費助成