(2) 免疫抑制薬 【消火剤での消火活動に相当。火元の種類によって、有効な消火剤は異なる。】
免疫抑制薬は、膠原病の特定の病気に対して、有効性を発揮する。病気の種類が異なると、全く効かないこともある。効果の有無は患者によっても異なるため、効くかどうかは実際に投与してみないとわからない。臨床では、しばらくの間投与してみて効果がみられないようなら、別の薬剤に切り替えるといった試行錯誤的な投与策がとられるという。
通常、免疫抑制薬は、服用を始めてから効果があらわれるまでに1~3ヵ月程度を要する。効果があらわれるまでの間に、患者が薬効に疑いを持ち、自己判断で服用を中止してしまうケースがあるとされる。こうしたことを避けるために、免疫抑制薬の投与にあたり、医師からの事前説明が重要となる。
なお、ステロイド薬ほどではないが、免疫抑制薬にも副作用があるとされる。投与後の状態の推移をウォッチしていく必要がある。
(3) 分子標的薬 【ガスの元栓を閉めるなど、火元を断つ消火活動に相当。コストがかかることも。】
分子標的薬は、2000年代以降、本格的に用いられるようになった新しい薬剤である。免疫反応に関する特定の細胞や物質だけにピンポイントに作用して、免疫を抑制する。適切な分子標的薬を使用すると、症状が劇的に改善することもある。ただし、免疫抑制薬と同様、即効性は乏しい。副作用には、易感染以外のものは少ないとされる。
分子標的薬の中心的な存在である、生物学的製剤は、微生物や細胞の培養や発酵といった作用を通じて作られる。生物学的製剤は、化学合成薬に比べて大きな分子であり、内服すると胃や腸で分解・消化されてしまう。このため、注射や点滴で、直接血管内に投与するものが一般的となる。
生物学的製剤の製造には、培養棟などの大きな設備と、温度や湿度の管理システムなどが必要となり、コストがかかる。加えて、劇的な薬効を示していることもあり、薬価が高額に設定されている。近年、生物学的製剤の後続薬であるバイオシミラーが一部で登場しているが、薬価は、先発薬の7割水準と、やや高めに設定されている
20。このように、使用にあたり、医療経済面の問題が生じている
21。なお、基礎疾患を持つ患者の場合には使用できないことがある、などの制約もある。
20 従来型の医薬品においては、原則として、ジェネリック医薬品の薬価は、先発薬の5割水準に設定される。
21 化学合成で作られる分子標的薬も作られている。内服が可能だが、薬価は、生物学的製剤と同様にやや高額となっている。