3|放射線治療と他の治療法を組み合わせることもある
放射線治療は、単独で実施されることもあれば、手術や化学療法と組み合わせて行われることもある。ここでは、単独療法と併用療法についてみていこう。
(1) 単独療法
放射線治療の単独療法は、限局したがんが主な対象となる。頭頸部がん、食道がん、肺がん、子宮頸がんなどの早期がんが対象となる。他にも、低リスクの前立腺がん、低悪性度の悪性リンパ腫などが対象となる。また、進行がんであっても、患者の年齢や全身状態からみて、患者の身体が手術などの負担の大きい治療には耐えられない、と判断される場合、単独療法がとられることがある。
(2) 併用療法(集学的治療)
手術との併用、化学療法との併用についてみていこう。
(a) 手術との併用
放射線治療を行うタイミングによって、術前照射、術中照射、術後照射の3つに分けられる。
(a-1) 術前照射
手術前に、がん病巣や周囲浸潤組織のがん細胞に放射線を照射する。目的として、次のものがある。
・手術で切除した組織の切り口にある、がん細胞がすべて取り除かれやすくなるようにするため
・切除不能や切除できるかどうか、ボーダーライン上にある病変を切除可能にするため
・手術中の操作で腫瘍が散布して、遠隔転移が起こることをコントロールするため
術前照射は、食道がん、膵臓がん、直腸がんなど、多くのがんで行われる。
(a-2) 術中照射
手術中に切開した状態で、腫瘍部を目視して、直接、放射線を照射する。術中照射の多くは外部照射で行われるが、小線源用のアプリケータを設置して小線源治療を行うこともある。実施にあたり、放射線治療室を併設した専用の手術室、または手術室から放射線治療室への患者の移動が必要となる。
術中照射は、かつては、膵臓がんでよく行われていたという。近年は、高精度放射線治療が普及したこともあり、その実施数は大きく減少している。
(a-3) 術後照射
手術で切除しきれずに残ったがん細胞を死滅させて、がん再発の可能性を下げる目的で、放射線を照射する。頭頸部がん、乳がん、肺がん、食道がんなど、さまざまながんで行われる。
(b) 化学放射線療法
抗がん剤と放射線治療を併用する治療法は、「化学放射線療法」と呼ばれている
3。抗がん剤を投与する時期として、放射線治療前、放射線治療と同時、放射線治療後の3つがあり、病状等に応じて選択する。
抗がん剤と放射線治療を併用する目的として、主に、4つのものがあげられる。
・放射線治療の効果を高めるため
・他臓器への転移を防ぐため
・抗がん剤により腫瘍の体積を縮小させて、放射線治療を実施しやすくするため
・抗がん剤が届きにくい中枢神経系領域に放射線治療を行うことで治療効果を高めるため
3 放射線治療を分子標的薬や内分泌療法薬と併用することも行われている。