(a)適用範囲の除外
保険契約の定義を満たすクレジットカード契約及びローン契約の取扱いについて、以下の通りとする。
・特定の要件(会社が顧客との契約の価格設定において、個々の顧客に関連した保険リスクの評価を反映していない場合)を満たすクレジットカード契約について、IFRS第17号の適用範囲から除外し、IFRS第9号を適用する。
・特定の要件(死亡免除付ローンのように、保険事故の補償が契約者の義務を解消するために要求される金額に限定されている場合)を満たすローン契約について、IFRS第17号又はIFRS第9号のいずれかを適用することができる。
(b)契約獲得キャッシュ・フロー
いくらかの契約獲得費用を予想される将来の更新に配分する。結果として損失の発生する契約が減少し、契約獲得費用のための資産が増加することになる。
・(ブローカーに支払われる手数料のような)契約獲得キャッシュ・フローを関連する更新後の契約にも配分する。
・会社が更新後の契約を認識するまで、これらの契約獲得キャッシュ・フローを資産として計上する。
・会社が更新後の契約を認識するまで、報告期間毎に当該資産の回収可能性を評価する。
・財務諸表の注記に、以下の情報の開示を要求する。
・期首から期末における当該資産の異動
・当該資産の認識中止や更新後の保険契約グループの測定に含める時期に関する情報
・減損損失の認識やその取消を異動表で区分して開示
(c)投資リターンサービス及び投資関連サービスに起因する契約上のサービスマージン(CSM)
一部の契約について、収益認識と投資サービスの提供との整合性を高める。
・一般的な測定モデルにおける保険収益の認識は、保険カバーだけでなく、投資リターンサービス及び投資関連サービスに起因する契約上のサービスマージン(CSM)も含めて考慮する。
・財務諸表の注記に、以下の情報に関する開示を要求する。
・保険料配分アプローチが適用される以外の保険契約について、将来の損益における報告期間末のCSMを定量的に開示する(現在のIFRS第17号で認められていた定性的な開示のみを行う選択肢は削除)
・保険カバー及び投資リターンサービス及び投資関連サービスが提供する便益の相対的ウェイトを決定するために採用した判断
(d)保有再保険契約
元受契約の発行前又は同時に発行されている比例再保険契約について、基礎となる元受契約が不利な契約である場合に、対応する再保険契約の利得を直ちに認識することで、会計上のミスマッチを軽減する。
当初認識時に不利な元受契約の損失を認識している場合で、対応する再保険契約が、以下の条件を満たしている場合に、この再保険契約の利得を認識する。
・元受契約の保険金を比例的にカバーする(即ち、保険金の固定された割合を回収する)
・不利な元受契約が発行される前又は同時に発行された
(e)財政状態計算書への表示
会社が、保険契約のグループではなく、保険契約のポートフォリオを使用して決定されるレベルで、保険契約の資産及び負債を財政状態計算書に表示することを要求する(簡素化)。
(f)リスク軽減オプションの適用
会社が金融リスクを軽減するために再保険契約を使用する場合に適用できるように、リスク軽減オプションを拡張して、会計上のミスマッチを軽減する。
直接連動有配当契約の金融リスクを軽減するために再保険契約を使用する場合にリスク軽減オプションを使用することが認められる。
(g)IFRS第17号及びIFRS第4号におけるIFRS第9号「金融商品」の一時的免除の発効日
IFRS第17号の発効日を2021年から2022年(1月1日以降に開始する事業年度)に1年延期し、(一定の条件を満たす保険会社等に認められている)既存のIFRS第4号におけるIFRS第9号「金融商品」の発効日も2021年から2022年に1年延期する。
(h)移行措置の変更及び救済
基準を初めて適用する時に、会社が使用する3つの簡便化のオプションを追加する。
(1) 企業結合
・修正遡及アプローチが認められる場合や公正価値アプローチの適用において、会社は、企業結合により取得した保険金支払負債を残存カバーに対する負債ではなく、発生保険金に対する負債として、分類することができる。
(2) 移行日からのリスク軽減
会社がオプションを適用する日又はそれ以前にリスク軽減関係を指定した場合に限り、会社は移行日以降に将来に向かってB115項のリスク軽減オプションを適用することができる。
(3) リスク軽減と公正価値アプローチ
直接連動有配当保険契約のグループに対して、以下の要件を満たす場合に、公正価値アプローチの適用を選択することができる。
・移行日から将来に向かって、リスク軽減オプションを保険契約グループに適用することを選択する。
・移行日までに、保険契約のグループから生じる金融リスクを軽減するためにデリバティブ又は再保険契約を使用していた。
(i)軽微な修正
IASBは、IFRS第17号の起草が審議会の意図する結果を達成しないいくつかの事例に対処するための軽微な修正を提案している。この中には、例えば「投資要素の定義の明確化」等が含まれている。
3―今回の修正EDに対するEFRAG(欧州財務報告諮問グループ)の意見