文化庁の調査によると、2017年11月時点の国内における日本語教育実施機関・施設数は2,109施設、日本語教師数は39,558人、日本語学習者数は239,597人であるという。近年は、日本語教育実施機関・施設数がほぼ横ばいで推移する中、日本語教師数と日本語学習者数は増加傾向にある(図表3)。しかし、日本語教師数の直近5年間の増加率は年平均+3.1%であるのに対して日本語学習者数は同+11.4%と、両者には4倍近い差が生じている。また、日本語教師の57%にあたる22,640人は無報酬のボランティアであり、そのほとんどは大学等機関や法務省告示機関
5(日本語学校)以外で働いている。大学や日本語学校での教育は、在留者全体の約12%を占める留学生の一部が対象であり、留学生以外の大半の在留者は、ボランティア中心の地域にある日本語教室などで学ぶ。ボランティアの中には日本語教育の有資格者もいるだろうが、そうでないボランティアも少なくないため、地域の日本語教育の質は均一ではない。今年新たに創設される在留資格は、就労を目的としたものであることから、この資格で流入する外国人労働者は地域の日本語教室で日本語を学ぶことになる。仮に、今後5年間に34.5万人の学習者が加わることになるとすれば、現在の水準から考えると、新たに5.8万人の日本語教育人材が必要となる。同時に、日本語教育の質の向上を求めるとすれば、ボランティアとして働く2.2万人の置き換えや再教育も必要となり、求められる教師数
6はさらに増える。ボランティア頼みの状況を脱却するには、日本語教育に関わる人材を雇用していくことが必要だ。しかし、公的にそれを実現しようとすれば財源問題は避けられず、それを誰がどのように負担していくのか、国民的な議論が必要となる。
また、日本語を学ぶ外国人の約6割は市町村の日本語教室を利用している
7が、法務省の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策検討会」資料によると、2016年11月時点で日本語教室が開設されていない地域は1,896市区町村中1,209存在し、在留外国人の約2割にあたる約55万人の外国人がそこに居住しているという。こうした地域的なばらつきも日本語教育の大きな課題だ。
さらに、外国人の子弟に対する教育支援の課題もある。外国人の児童生徒には教育の権利が法的に保障されているものの、就学の義務は課されていない。そのため学校教育において体系的な支援が行われず、日本語能力の乏しい児童生徒が教育機会から置き去りにされる状況が生まれている。日本語指導を必要とする子供は外国人就労の拡大を背景に増加しており(図表4)、この問題の放置が格差を固定化し、将来的な社会保障負担増や社会の不安定化につながるリスクも懸念される。
上記以外にも、統一的な資格要件がないことで日本語教師の中にも質的ばらつきが生じていることや、地域の取組みを共有して横展開していく仕組みが十分に整えられていないことなど、残された課題は多い。日本語教育の体制整備は、まだ道半ばである。