(イラン産原油は全面禁輸へ)
4月22日、米トランプ政権はイラン産原油禁輸の制裁に関して、日本・中国など8カ国・地域に認めていた適用除外
1を撤廃することを発表、今月2日以降は同国からの全ての原油輸入が米制裁の対象となった。
米政権によるこの強硬措置は正直意外であった。今年に入ってからの原油価格はOPECプラス
2による大幅な減産や米制裁を受けるベネズエラ、イランの生産減少、世界経済減速懸念の緩和等によって大きく持ち直しており、それに伴って米国内のガソリン小売価格も急上昇していたためだ。米政権は消費者の負担となるさらなる原油高を回避するためにイラン原油禁輸の適用除外措置を一部延長するものと予想していたが、当てが外れた。
今回、全面禁輸に踏み切った理由として、米政権は「核・ミサイル開発を進め、テロ組織に資金を供給するイラン政権の資金源を断つ」ことを挙げている(4/22ホワイトハウス声明)。来年に大統領選を控え、支持基盤を固める思惑も背景にあったと考えられる。
また、イラン産原油の輸出減少も理由になったと推察される。昨年11月の制裁発動時にはイランの原油輸出量が日量200万バレルを超えており、一気に全面禁輸に踏み切ると原油価格が急騰する恐れがあった。一方、直近の輸出量は制裁の影響でほぼ半減しているため、従来に比べて全面禁輸時の価格へのインパクトが抑えられる。
さらに、米政権がサウジ等の増産による穴埋めを当て込んでいることも理由になった。上記の声明ではサウジアラビアとUAEを名指しした上で、「米国とそのパートナーは市場から排除されたイラン産原油を補うための供給を確実にするために、直ちに行動を起こす」と明記されている。
市場ではこの決定を受けて、需給タイト化観測の高まりから原油価格が上昇し、WTI先物価格は一時1バレル66ドル台に到達した。足元は米政権による対中国関税引き上げ表明(後述)を受けてやや下落しているものの、それでも61ドル台と年初から3割以上高い水準にある。
1 米政権は昨年11月5日にイラン産原油の禁輸を各国に求める制裁を発動したが、原油価格高騰を防ぐため、主要8カ国(中国、ギリシャ、インド、イタリア、日本、韓国、台湾、トルコ)については180日間の適用除外を認めた。
2 OPEC加盟国とロシア、メキシコ、カザフスタンなど非OPEC産油国の10カ国