米国経済の見通し-緩やかな景気減速予想も、高まる下振れリスク

2019年03月11日

(窪谷 浩) 米国経済

■要旨
  1. 米国の10-12月期の成長率(前期比年率)は+2.6%(前期:+3.4%)と前期から低下。外需の成長押下げ幅が縮小したほか、設備投資に回復がみられたものの、在庫投資の成長押上げ幅が縮小。個人消費も好調を維持したものの、前期から伸びが鈍化した。
     
  2. 海外経済の減速懸念や、米通商政策、米国内政治の混乱などが嫌気され、資本市場は年末にかけて不安定な動きとなるなど、米経済の下振れリスクが高まっている。
     
  3. 当研究所では、米経済の見通し前提として、海外経済の減速や米国内政治の混乱による実体経済への影響は限定的に留まり、資本市場も安定することを見込む。この前提の下で19年は個人消費主導の成長が持続し、成長率(前年比)は+2.3%と18年の+2.9%からは低下も、堅調な成長率を維持すると予想。一方、循環的な景気拡大局面の終了、財政や金融による景気押上げ効果の剥落などから、20年は+1.8%に低下を予想。
     
  4. 金融政策は、資本市場の安定などを確認した後、19年に2回利上げをし、その後利上げ打ち止めとなる見込み。ただし、年1回の利上げに留まる可能性が高まっている。
     
  5. 米経済に対するリスクは、欧州や中国など海外経済の大幅な減速に加え、米国内政治の混乱。国内政治では、ロシア疑惑や20年の大統領選挙を睨んでトランプ大統領と野党民主党の対立激化による議会の機能不全を懸念。ねじれ議会で20年度予算や債務上限引き上げ審議が難航することや、トランプ大統領の通商政策に対する不透明感の高まりは資本市場を不安定化させ、米実体経済に悪影響となろう。
■目次

1.経済概況・見通し
  ・(経済概況)10‐12月期の成長率は、高成長となった前期から低下
  ・(経済見通し)成長率は19年+2.3%、20年+1.8%に低下。高まる下振れリスク
2.実体経済の動向
  ・(労働市場、個人消費)労働市場の回復が持続。消費者センチメントの動向に注目
  ・(設備投資)設備投資は持ち直しも企業センチメントの動向に注目
  ・(住宅投資)住宅価格、住宅ローン金利の上昇から住宅市場の回復に遅れ
  ・(政府支出、債務残高)
    ねじれ議会で予算審議は難航、拡張的な財政政策は軌道修正の可能性
  ・(貿易)引き続き保護主義的な通商政策が実体経済のリスク要因
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)堅調な賃金の伸びを反映し、物価基調は底堅い
  ・(金融政策)19年は年2回の利上げを予想も、1回に留まる可能性
  ・(長期金利)
    19年以降も政策金利の引き上げ継続、期間プレミアムの拡大から金利上昇が持続

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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