2019年も円高でスタート、今後の展開は?~マーケット・カルテ2月号

2019年01月23日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

ドル円は年初に世界経済への懸念に伴うリスクオフの円買いにより一時104円台まで円が急騰した。近年は毎年年初(1~2月)に円高が発生してきたが、今年も繰り返された形だ。その後、パウエルFRB議長のハト派的発言や米中貿易摩擦の緩和期待などからリスクオフ地合いが緩和し、足元は109円台後半まで回復している。

ただし、FRBがハト派色を鮮明にしたことは、ドル高の抑制にも働くため、ドル円の上値は重い。当面は米利上げ観測が抑制されるなか、米中摩擦やEU離脱問題、米政府閉鎖などへの警戒が燻るため、リスクオフの円高に警戒が必要になる。一方、3月以降にはドル円の持ち直しが期待できる。トランプ大統領は支持率に悪影響となる株安を回避すべく、中国との交渉で部分的に合意し、3月初旬の関税引き上げを延期する可能性が高い。それを受けて、リスクオンの円売りが見込まれる。ただし、FRBは市場への配慮から3月の利上げを見合わせると予想されるため、ドルの上昇余地も限られるだろう。3ヵ月後は1ドル110円~111円台を予想している。さらなる円安ドル高には、6月の米利上げ観測が必要になるだろう。

ユーロ円は、年初の円買いによって一時119円台まで円高が進行した後、ドル円同様持ち直しているものの、欧州経済の減速懸念などからユーロの上値は重く、足元も124円台で低迷している。ECBは利上げ路線を諦めてはいないが、当面は慎重なスタンスを採らざるを得ず、EU離脱問題と合わせてユーロの重石になる。当面はユーロ安に振れやすいだろう。一方、3月になると、既述のとおり米中摩擦が緩和し、EU離脱問題の不透明感が多少緩和することで、ユーロが買戻されると見ている。3ヵ月後は126円~127円程度と予想している。

長期金利は、足元で0.0%付近にある。当面、世界経済の不透明感が意識され、0.0%付近での推移が続きそうだ。3月には米中摩擦の緩和などからやや持ち直すものの、米利上げ見送りが上昇抑制に働く。3ヵ月後は0.0%台半ばと予想している。
 
(執筆時点:2019/1/23)
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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