なお、トランプ大統領が実現に意欲を示している「税制改革」は4%に留まったほか、投票先が民主党と共和党で拮抗していたため、有効な争点として有権者にアピールできていない。
一方、有権者の関心が最も高かった「医療」に関しては、民主党がオバマケア廃止に反対する方針を明確に示している。
また、追加減税についても同様に反対する意向を示していることから、トランプ大統領が実現を目指すこれらの政策では、民主党の反対で法案成立が不可能なため、軌道修正は必至だろう。
(今後の経済政策)
中間選挙後の経済政策で最も注目される通商政策のうち、「米中貿易戦争」に関しては、トランプ大統領が、中国に対して強硬姿勢で臨んでいることを評価する声は多い。
中国による知的財産権の侵害や、強制的な技術移転問題に関する課題意識は、与野党、財界、日本や欧州などの先進国で共有されており、トランプ大統領に対する期待が大きい。このため、トランプ大統領による対中強硬姿勢に変化はないだろう。もっとも、同大統領が制裁手段として追加関税を多用していることについては、米経済への悪影響から、財界を中心に見直しを求める声は多い。
一方、トランプ大統領が通商政策で標的としているのは中国だけではない。来年以降に交渉が本格化するとみられる輸入自動車に関しても、同大統領は、追加関税を示唆している。輸入自動車関税が賦課される場合には米国をはじめ世界経済への影響が非常に大きいため、今後の交渉が注目される。
なお、本来議会の権限である通商政策交渉について、トランプ大統領が安全保障などを理由に、大統領権限を行使し、議会を無視する形で制裁手段の決定が行われていることに関しては、議会からの反発が強い。このため、議会には大統領権限を縛るための法律を立法化する動きも一部にみられているが、実現は難しいだろう。
インフラ投資については、トランプ大統領と、民主党ともに投資の拡大を目指しており、両者で政策協調の可能性が残っている。
ただし、20年の大統領選挙を睨んでトランプ大統領の成果にしたくない民主党の政治的な思惑や、インフラ投資実現のための財源問題などもあって、実際に政策協調できる可能性は低いとみられる。
(財政・債務残高):財政状況の悪化が経済政策の制約要因に
トランプ大統領が実現した大型減税や拡張的な財政政策の結果、財政状況は急激に悪化している。
議会予算局(CBO)は、現在の予算関連法が継続すると仮定した場合に債務残高(名目GDP比)は、足元の78%から20年後には118%への増加を見込んでいる[図表4]。