1|このレターの位置付け
生命保険会社のチーフ・アクチュアリー宛のこのレターは、PRAとチーフ・アクチュアリー・コミュニティとの間の継続的な対話の一部であり、このレターを取締役会や他の人と適切に共有することを推奨する、としている。
このレターの目的については、「ソルベンシーII体制下でのPRAの規制活動から得られた知見及び観察の一部を共有し、当時のPRAが発表した期待の一部を再掲すること」としている。
2|このレターの概要
このレターでは、マッチング調整(MA)に重点が置かれているが、これが会社にもたらす重要なベネフィットを考慮すると驚くべきことではない、としている。これは、申請プロセスを効率化し、内部モデルの資本モデリングを向上させるために、さらに埋め込み(embedding)が必要な領域と考えられる、としている。内部モデルは、特に、長寿リスク、信用リスク及び依存関係モデリングの分野において注目を集めている。会社の内部モデル申請の評価の効率は、申請の品質、モデルの検証及び内部モデルの文書に依存している。
なお、PRAは、ユニット・リンク商品の技術的準備金を計算するための予測期間と、リスクとソルベンシーの自己評価(ORSA) におけるストレステストに対する会社のアプローチに関する主たるテーマのレビューからの観測を含む、ソルベンシーIIが導入した規制要件の他の側面についても検討している。
さらに、「チーフ・アクチュアリーの役割は、シニア・インシュランス・マネジャー・レジーム(SIMR)内のシニア・インシュランス・マネジメント機能である」と述べている。
3|このレターの具体的内容
ここでは、レターの具体的内容について報告する。
このレターにより、監督当局がマッチング調整や内部モデルのモデリング等に関して、どのような問題意識を有しており、保険会社のチーフ・アクチュアリーに対して何を期待しているのかを窺い知ることができる。
例えば、会社やチーフ・アクチュアリーに対して推奨すべき点として、以下のような項目が挙げられている。
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技術的準備金におけるマッチング調整における基本スプレッド(FS)に関しては、チーフ・アクチュアリーは、信用資産について集計されたFSの表が、割り当てられたFSセクター及び資産信用度ステップ(credit quality step:CQS)に依存することを認識して、適切なFS、特に会社が保持するリスクを反映するFSが適用されるようにする。
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内部モデルにおけるマッチング調整(MA)については、
(1)資産サイドのリスクモデリング、
(2)リバランス、
(3)妥当性検証、の3点が、改善が最も必要とされる分野である。
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内部モデルにおける長寿リスクのモデリングに関しては、最良推定前提における死亡率の改善が鈍化するという証拠に重点が置かれるにつれて、内部モデルの長寿リスク較正が、最良推定前提がより高いレベルの改善に戻る可能性を適切に反映するかどうかを会社が検討する。
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内部モデルの依存関係のモデリングについては、相関行列の半正定値(positive semi-definite:PSD)性についてのアルゴリズムやアプローチが、最も重要な相関関係に重大な変化をもたらさないようにするプロセスを確立し、モデル検証に組み込むべきである。
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内部モデルの文書化については、具体的な記載項目や考え方を掲げるとともに、読者が使いやすくするための提案も行い、チーフ・アクチュアリーがこれらを念頭において会社の文書化と提出物を審査する。
さらに、
ORSAのストレステストへのアプローチや
ソルベンシー及び財務状況報告書(SFCR)についてのレビューを踏まえて、会社やチーフ・アクチュアリーに期待すべき内容等を述べている。
(1)技術的準備金におけるマッチング調整(MA)
(1-1)MA申請への変更
PRAは、MA申請プロセスを実施技術基準(Implementing Technical Standards:ITS)要件の制約内でより合理化するための選択肢を検討する際に、最近発表された監督声明(SS)7/18
21において、PRAのアプローチが、会社がその申請において求めてきている変更に対して、比例的で適切である、と述べている。
特に、PRAは、更新された申請の「クリーン」バージョンと、 MA申請で変更されなかった、追跡された変更の一部として強調表示されないテキストが、静的なままであることの確認書とともに、最新のMA申請への変更が明確に示されている場合の更新されたMA申請を受け入れる、としている。申請が承認された場合、会社は直ちに申請審査プロセスで合意された変更を反映した更新版MA申請書の最終版を提出することにより、プロセスを完了させる。PRAは、提案された変更の概要と、更新されたMA申請への適切な相互参照を会社が提供した場合に役立つことを発見した、としている。
会社は、変更がそのセクションに関係しない既存のMA申請のセクションを更新しないことを提案することができる。例えば、更新されたMA申請が単独で新しい資産クラスを追加する場合の死亡率リスク評価を更新する必要はないかもしれない。PRAは、会社が既存のMA申請を更新しないように提案した場所を明確に設定している場合に役立つことを発見した、としている。
PRAがSS7/18
21においても述べているように、PRAによって既存の申請が検討されている間に、追加のMA申請を提出できる状況があるかもしれない。例えば、変更間の依存関係が最小限である場合で、第2の適用の状況は、より迅速な決定が可能であるようなケースである。会社が、申請を行う前に監督チームとケースバイケースで対応する可能性について話し合った場合に役立つ。第2の申請が承認されてから第1の申請が承認されると、会社はこれを反映するように第1の申請を更新する必要がある。