ここでは、これまでのレポートでも述べてきたように、SIFIの概念及び米国におけるSIFI指定及びその解除を巡る動きについて、報告する。
1|SIFIとは
SIFIとは、「Systemically Important Financial Institution」の略で、「システム上重要な金融機関」と呼ばれている。事業や取引規模が大きく、破綻すると金融システムに大きな影響を与える金融機関のことを示している。2008年9月のリーマンショック以降、新たな金融規制対象区分を表す言葉として使用されており、SIFIに指定されると、例えばより厳しい自己資本規制が課せられたりすることになる。
米国においては、SIFIはFSOCによって指定される。ドッド・フランク法により、連結総資産500億ドル以上の銀行持株会社及びシステム上重要なノンバンク(ノンバンクSIFI)は、FRB(連邦準備制度理事会)による厳格な規制監督の対象となる。FSOCによってSIFIに指定されたノンバンクはFRBの監督下に置かれ、SIFIに指定された米国銀行と同様の健全性規制が課されることになる。
FSOCはこれまで、保険グループのノンバンクSIFIとして、2013年7月にAIG、2013年9月にPrudential 、2014年12月にMetLifeを指定してきた
2。
FSOCは、ドッド・フランク法の下で創設され、米国金融機関の安定性を確保するための包括的な監視を実施する。連邦金融監督者と州規制監督者、そして大統領によって任命された保険の専門家等で構成されているが、投票権を有するメンバー10名
3とOFR(財務省金融調査局)及びFIO(連邦保険局)局長等の投票権を有しないメンバーに分かれ、財務長官が議長を務めている。
これに対して、国際機関であるFSB(Financial Stability Board:金融安定理事会)は、2011年11月から、経営危機に陥った場合に世界の金融システムに大きな混乱をもたらす恐れのある国際的な巨大金融機関をG-SIFIs(Global Systemically Important Financial Institutions:グローバルにシステム上重要な金融機関 )として指定し、より高い健全性を求める政策措置を課すこととしてきている。なお、G-SIFIsについては、2011年と2012年は、G-SIBs(Global Systemically Important Banks:グローバルにシステム上重要な銀行)のみだったが、2013年からは、G-SIIs(Global Systemically Important Insurers:グローバルにシステム上重要な保険会社)も、公表されてきている
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2 ノンバンクSIFIとしては、これらの3社以外に、GE Capitalが2013年7月に指定されていたが、2015年4月の金融事業からの撤退表明以後の金融資産の売却により、2016年6月に指定解除されている。
3 財務長官に加えて、連邦準備制度理事会(FRB)、通貨監督庁(OCC)、証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)、連邦預金保険公社(FDIC)、連邦住宅金融庁(FHFA)、全米信用組合管理庁(NCUA)、消費者金融保護局(CFPB)の長と保険の専門性を有する独立メンバー
4 FSBによる最新の公表リストによれば、G-SIBsは30行(2017年)、G-SIIsは9社(2016年)となっている。