円安の進行を阻むハードルは?~マーケット・カルテ10月号

2018年09月21日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

9月に入り、ドル円では円安ドル高が進み、足元は112円台後半で推移している。好調な米経済を背景とする利上げ観測によってドル買いが優勢になったためだ。さらに、直近では米中貿易摩擦への警戒が緩和したことでリスク選好の円売りも加わった。この間、市場がリスク回避的になる場面もあったが、(経済が好調で安心感のある)ドルが円とともに買われることでリスク回避の円高圧力が緩和された。円高進行への警戒が薄れたこともドル買いの安心感を醸成した。

今後も米経済は堅調に推移し、利上げ継続観測に伴うドル高圧力が続く可能性が高い。ただし、米政権の強硬な通商姿勢は続き、貿易摩擦の影響を受ける米経済への過度の楽観は後退するだろう。また、今後は日米貿易交渉の緊迫化が予想されるほか、米利上げが新興国からの資金流出を誘発する可能性が高い。ドルが買いづらくなるなかでリスク回避的な円買いがたびたび発生することが見込まれるため、3ヵ月後のドル円は現状程度と予想する。

ユーロ円は、ECB理事会後の総裁会見がややタカ派的と捉えられたことに加え、リスク選好的な円売りもあって、ユーロ高が進み、足元は132円台後半にある。今後、ECBの量的緩和が終了に向かうことは域内金利の先高感を通じてユーロ高要因になる。一方で、イタリアの財政や英国のEU離脱に対する懸念がユーロの上値を抑えると見込まれる。今後はリスク回避の円買いも予想されるため、3ヵ月後の水準は現状並みと予想している。

長期金利は、米長期金利上昇や日銀の国債買入れ減額を受けてやや上昇し、足元は0.12%台にある。今後も日銀はタイミングを見計らいつつ国債買入れを減額し、徐々に金利上昇を許容していくと予想される。7月末に金利変動幅拡大を決めたにもかかわらず現水準に留まるのであれば、殆ど変動幅拡大にならず、国債市場の機能回復にも寄与しないためだ。3ヵ月後の水準は0.1%台後半と見ている。
 
(執筆時点:2018/9/21)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)