導入迫る軽減税率-その仕組みと残された課題

2018年08月24日

(鈴木 智也) 成長戦略・地方創生

■要旨

消費税率の引き上げが2019年10月に予定されている。今回注目されるのは、日本で初の導入となる軽減税率である。軽減税率の導入は、低所得者対策として打ち出されたものであるが、事業者負担の過大さなどから多くの経済学者や事業者が反対してきた制度でもある。その導入が現実に迫る中、事業者はその対策に取り組まなければならない。
 
軽減税率の導入によって大きく変わるのは、仕入税額控除に関わる部分である。4年間の猶予期間が終われば、現行よりも厳格で煩雑な仕様が求められるようになる。一部の免税業者については、課税事業者になる選択を迫られることもあるかもしれない。制度に関する理解を深めておくことは、重要なことである。
 
また、代替財源の問題に目を向けると、未だに3,000億円程度の財源が確保されていない。有力な財源には「金融所得税」が浮上しているようだ。仮に、金融所得税の引き上げが決まれば、株価の下落や金融市場の動揺は避けられないだろう。年末にかけて審議される2019年度予算編成や2019年度税制改正の行方には、十分な注意を払う必要がある。
 
本レポートでは、2019年の導入が迫る軽減税率に焦点を当て、その仕組みと残された課題について整理している。

■目次

1――軽減税率の仕組み
  1|対象品目とは?
  2|経理処理はどう変わる?
2――中小企業に対する政府支援
3――未定のままの代替財源
  1|消費税収の使途変更
  2|代替財源に金融所得税が浮上

総合政策研究部   准主任研究員

鈴木 智也(すずき ともや)

研究領域:

研究・専門分野
経済産業政策、金融

経歴

【職歴】
 2011年 日本生命保険相互会社入社
 2017年 日本経済研究センター派遣
 2018年 ニッセイ基礎研究所へ
 2021年より現職
【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)