(通商法301条に基づく措置):関税対象額は今後増加する可能性
今回発動した通商法301条に基づく措置は、中国の技術移転や知的財産権の侵害に対処するためのものである。トランプ大統領は、大統領覚書で17年8月にUSTRに対して調査を命じていたが、前述の報告書は、中国政府が不当に介入していると結論づけた。
同報告書では、中国が(1)中国企業との合弁会社の要件、海外投資の制限、中国政府による審査や許認可プロセスを使って米国企業から技術移転を強制していること、(2)差別的な許認可プロセスを使って、米国企業から中国企業に技術移転を行っていること、(3)大規模な技術移転を発生させる投資や買収を指示、促進していること、(4)米国のコンピュータネットワークに侵入して、有益なビジネス情報にアクセスすることを、指揮または援助していること、を認定した。
同報告書を受けて、トランプ大統領は、(1)航空宇宙、情報・コミュニケーション、機械などの分野を含み、米経済の損失額と同等の規模の輸入品に対して25%の追加関税賦課、(2)差別的な技術ライセンスについてWTO提訴、(3)米国の機密技術を獲得するための取り組みに対して新たな投資規制の提案、を指示した。
同大統領の指示を受けて、3月23日にはWTOに提訴された。また、投資規制については当初中国を特定する形で規制の導入が検討されたものの、財務省が所管し国家安全保障上懸念のある国内資本の買収案件を審査する対米投資委員会(CFIUS)を活用することが決まった。なお、CFIUSは中国だけを対象としていないものの、議会は中国を念頭に審査対象取引の拡大や、審査項目の追加など、審査機能を強化した法案
5を近日中に成立させる見通しとなっている
6。
一方、関税賦課では輸入対象額がトランプ大統領の指示により、二転三転(500億ドル→1,500臆ドル→棚上げ)したものの、現状では6月15日に発表された500億ドル相当に対して25%、7月10日に発表された約2,000億ドル相当に対して10%を賦課する方針が示されている(図表8)。
実際、7月6日から818品目(323億ドル)に対して25%の関税賦課が開始されており、近日中に284品目(141億ドル)も開始される見込みである。また、7月発表分については公聴会などを経て9月以降に関税が賦課される見込みである。
これらの米国による関税措置に対して、中国は7月6日に米国と同額相当に対して25%の関税を賦課したほか、140億ドル分についても米国の関税賦課の開始と同時に制裁関税を開始する方針を示している。一方、現状では2,000億ドルに対応する措置は発表されていない。
なお、トランプ大統領は中国政府が対抗措置をとる場合には、さらに3,000億ドルを課税対象に追加する
7としており、今後関税対象額が増加する可能性も否定できない。