ソルベンシーII制度の下で2016年に初めて作成・公表されたSFCRについては、関係者から各種の反応が見られたが、今回の2017年のSFCRについての直接的な反応は、昨年に比べて比較的穏やかであるように見受けられる。
SFCRに対する基本的な反応については、昨年の保険年金フォーカス「
欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(1)-全体的な状況報告-」(2017.7.11)で報告しており、この反応や意見は引き続きベースとして存在している。
今回2017年のSFCRの公表を踏まえての新たな反応等の動向は、以下の通りである。
1|保険会社の対応
SFCRについてはグループのみ作成し、子会社毎に別々のSFCRを作成することが免除されるオプションも用意されているが、これを利用している会社は少数で、殆どの会社が単体のSFCRも作成しているようである。
保険会社各社は、他社の2016年のSFCRを分析することを通じて、自社のSFCRの見直しを行ってきている。各種の説明内容や情報の提供レベルについては、他社との比較感を見る中で、自社のSFCR作成に生かしていこうとしている。時間の経過とともに、自然に一定程度のコンバージェンスが実現していくことが期待されている。
2|監督当局の対応
英国はSFCRの数値の外部監査を義務付けているが、監督当局であるPRA(健全性規制機構)が、現在150社以上の小規模会社に対するこの負担を軽減することを検討している。
3|SFCRの読者について
SFCRについては、アナリストやコンサルタント、競合他社等に読者が限られており、保険契約者には殆ど読まれていない状況にある模様である。実際に、SFCRのあるページをクリックする人は多いが、SFCRがダウンロードされる数はごくわずかとのことである。
こうした中で、保険会社の作成者も、SFCRが多くの読者に読まれることは想定しておらず、例えば平均的な保険契約者がSFCRの内容を理解することも想定していない模様である。ただし、要約版については、これが多くの読者に何らかの示唆を与えることを目指している模様である。
その意味で、SFCRの内容については、一定程度の読者を想定した上で、理解してもらいたい事項、あくまでも一定の事実として認識してもらいたい事項等を整理する中で、それぞれの記載内容や記載方法及び記載量等のバランスが取られていくことになる。
なお、格付機関もSFCRが格付けに大きな影響を与えるとは判断していないようであり、その意味ではSFCRの位置付けが改めて問われているともいえる。
5―まとめ