強弱材料が交錯するドル円相場~マーケット・カルテ7月号

2018年06月21日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

ドル円は、6月に入って米利上げ加速観測や米朝関係進展期待によるリスク選好の円売りなどからやや円安ドル高に向かい、足元は110円台後半で推移している。

今後も中期的には緩やかな円安ドル高に向かうと予想するが、当面はドルの上値が重い展開が見込まれる。堅調な景気を背景とする米利上げ観測は引き続きドル高圧力になるものの、中間選挙を控えたトランプ政権は今後も保護主義姿勢を崩さず、貿易戦争への懸念に伴うリスク回避的な円需要が見込まれる。また、貿易戦争への懸念が一時的に緩和したとしても、今度は米金利上昇・ドル高が新興国からの資金流出懸念に繋がる可能性が高い。その際はリスク回避で円が買われやすくなる。しばらくは強弱材料が交錯し、方向感が出づらい地合いが想定されるため、3ヵ月後の水準は現状比概ね横ばいの110円台と予想している。

ユーロ円は、6月中旬のECB理事会において政策金利を少なくとも来年夏まで据え置く方針が示されたことを受けて急落し、足元は127円台後半にある。金融政策の正常化に時間をかけて臨む姿勢が示されたことで、しばらくユーロの上値は重くなりそうだ。ただし、ECBは量的緩和を10月から半減し、年末に停止することを決定している。方向性として、ECBが金融政策の正常化に向かっている点が次第に意識され、ユーロ円は緩やかに持ち直すと見ている。3ヵ月後の水準は129円前後と予想している。

長期金利は、国債需給がタイトななかで、貿易戦争懸念に伴う安全資産需要もあってやや低下し、足元は0.03%台にある。日本の物価上昇率は伸びが鈍化しており、日銀は7月末の展望レポートで物価見通しを引き下げざるを得なくなる可能性が高い。大規模緩和の長期化が市場で意識され、貿易戦争への懸念とともに長期金利の抑制に働くだろう。3ヵ月後の金利水準は現状比で横ばい程度の0.0%台前半から半ばとみている。
 
(執筆時点:2018/6/21)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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