円安再開の条件とは?~円相場の材料整理と展望

2018年04月06日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
  1. ドル円は年初から大幅な円高が進んだが、改めて主な円高材料を整理すると、米長期金利の上昇、米保護主義姿勢の強まり、日銀の早期緩和縮小・正常化観測が挙げられる。従って、今後円安ドル高が再開するための条件は、(1)米長期金利が上昇し「良い金利上昇」と捉えられること、(2)米保護主義姿勢が緩和すること、(3)日銀の早期緩和縮小・正常化観測が盛り上がらないことと整理できる。
     
  2. 筆者は年後半にはこの条件がある程度整う可能性が高いと見ている。米保護主義については、貿易戦争になれば米経済も傷つき選挙にマイナスに働くため、交渉で相手国の多少の譲歩を引き出すことで妥協に至る可能性が高い。また、米長期金利は米景気回復を背景に上昇し、次第に好調な米経済を反映した「良い金利上昇」との受け止めから、日米金利差拡大に沿った円安ドル高に向かうだろう。米長期金利は既に先進国最高水準になっているため、リスク回避が後退すれば、高金利通貨ドルを買う動きが活発化するはずだ。2000年以降の日米金利差とドル円を見ると、関係性が希薄になる時期もあったが、結局ドル円は金利差に回帰することが多く、大きな流れとして連動性は確保されている。
     
  3. 従って、今後のドル円はしばらく上値が重いものの、年後半から円安基調が再開するだろう。一方、米保護主義の動きは貿易戦争化こそ避けられるものの、今後も新たな動きが出てくることが予想されるため、その警戒感がドルの上値抑制に働くことで円安ペースは緩やかに留まると見ている。大幅な円安は見込みづらい。
     
  4. ただし、米トランプ政権の意思決定は不確実性が高いだけに、制裁の応酬が実行される可能性も排除できない。もし、米保護主義姿勢が今後もますます強まっていく場合には、現状からさらに円高に向かうことになる。シナリオの実現可能性としては、上記の円安シナリオが6割、円高シナリオが2割、横ばいシナリオが2割程度と見ている。
■目次

1.トピック:円安再開の条件とは?
  ・円高ドル安をもたらした3大材料
  ・今後の見通し
2.日銀金融政策(3月):早期正常化観測の打ち消しを図る
  ・(日銀)現状維持
3.金融市場(3月)の振り返りと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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