貸出・マネタリー統計(18年2月)~投資信託の減少ペースが拡大

2018年03月09日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

3.マネーストック: 投資信託の減少ペースが拡大

3月9日に発表された2月のマネーストック統計によると、市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比3.3%(前月は3.4%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.8%(前月は2.9%)とともにやや低下した(図表10)。伸び率の低下はともに4ヵ月連続となる(小数点第2位まで考慮)。貸出の増加ペースが鈍化していることが響いているとみられる。
M3の内訳を見ると、最大の項目であり、全体の約半分を占める預金通貨(普通預金など)の伸び率が前年比6.7%(前月改定値は7.0%)と低下し(図表11)、M3全体の伸び率低下の主因となった。預金通貨の伸び率低下は5ヵ月連続となる。また、準通貨(定期預金など、前月改定値▲1.5%→当月▲1.4%)、CD(前月改定値▲1.0%→当月▲2.4%)の伸び率も引き続きマイナス圏で推移している。

M3に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率も前年比3.1%(前月改定値は3.3%)と低下した(図表10)。伸び率の低下は4ヵ月連続となる。
M3の伸び率低下に加えて、残高が大きい金銭の信託(前月改定値6.3%→当月6.1%)の伸びが低下したうえ、注目度の高い投資信託(元本ベース)の伸び(前月改定値▲0.9%→当月▲2.5%)がマイナス幅を拡大したことも広義流動性の伸び率押し下げに繋がった(図表12)。

投資信託(元本ベース)は低迷の色が濃くなってきており、2015年に見られたような積極的な残高積み増しは確認できない。金融庁の批判を受けて、かつての大ヒット商品であった毎月分配型投信の販売が自粛されていることの影響が続いているうえ、2月には世界的に金融市場が混乱し、円高・株安が進んだことで、投資マインドが萎縮した可能性がある。
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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