上掲の状況を改善すべく、軽度や初期の治療は地域の医院や診療所のかかりつけ医で、高度で専門的な治療は規模の大きな病院で行うという、それぞれの病院が持つ機能や役割を分担し、且つ業務の連携をより推進することを目的として、定額負担制度が義務化されることになりました。2016年4月に義務化された「紹介状なしの大病院受診時の定額負担」は、ユーザー(患者)側に相応の負担を求めることで、自身の症状に見合った医療機関を選択するように促した策とも言えるでしょう。
定額負担の対象となる大病院には2種類あります。
1つ目は、「特定機能病院」と呼ばれる病院で、高度の医療の提供・医療技術の開発・研修を実施する能力などを備えた病院となっています
3。2017年6月1日時点で、日本では85の病院が指定されており、多くが大学病院の本院となっています
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2つ目は、一般病床400床以上の「地域医療支援病院」に分類される病院です。制度導入当初は500床以上を対象としていましたが、2018年の診療報酬改定で対象が拡大し、400床以上となりました。地域医療支援病院とは、地域医療を担うかかりつけ医を支援する能力を備え、地域医療を支えるに相応しい設備などをもつ病院のことです。2018年11月末時点で571病院が指定されています
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患者による定額負担は、最低金額として、初診については5,000円(歯科は3,000円)、再診については2,500円(歯科は1,500円)となっています
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ただし、定額負担を求めない例として以下の内容も決められています。例えば、救急の患者、公費負担医療の対象患者、無料低額診療事業の対象患者、HIV感染者などです。また、その他、定額負担を求めなくても良い場合として、自施設の他の診療科を受診中の患者、医科と歯科の間で院内紹介した患者、特定健診・がん検診などの結果により精密検査の指示があった患者が挙げられています。
なお、紹介状について、少し詳しく説明をしますと、紹介状の正式な名称は診療情報提供書と言います。患者の病歴やこれまでの治療、病状など、医療機関が患者情報を共有し、紹介先の医師が診察をするために必要な情報を記載した文書です。地域の中小病院や診療所が発行し、費用全体は2,500円ですが、3割負担の場合の自己負担費用は750円となります。病院によっては紹介状以外に検査や診断の結果やデータが必要となる場合もあります。
3 厚生労働省「特定機能病院について」
4 特定機能病院の85病院中、大学病院の本院は78病院となっています。
5 厚生労働省「医療施設動態調査」(平成30年11月末概数)
6 具体的な定額負担の金額については、各病院が任意で決定することになっています。
3―制度の浸透や効果がでるには一定程度の時間が必要