中村 亮一()
研究領域:保険
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2―Insurance Europeの意見の概要
ソルベンシーIIレビュー:EIOPAの助言草案は、ECによって義務付けられている分野により焦点を当てるべきである
EIOPAの提案の全体的な影響評価も必要
保険ヨーロッパは、ソルベンシーIIの2018年のレビューの欧州委員会への欧州保険年金監督局(EIOPA)の助言草案への対応を公表している。
広範な対応において、保険ヨーロッパは、金利リスクや繰延税金の損失吸収能力(LAC DT)に関する提案など、委員会によって義務付けられていない分野に対するEIOPAの不当な焦点と努力に懸念を提起した。また、EIOPAに対し、その提案が経済的に意味があるかどうか(例えば、リスクマージン)と、その全ての提案の累積的影響がどのようなものかをさらに検討するよう求めた。
保険ヨーロッパは、EIOPAは過度に理論的なアプローチを避け、その助言の実際の経済的な意味と含みを無視すべきではないと述べた。例えば、EIOPAは、現在のリスクマージンの較正と方法論が、業界に総額で210億ユーロ、生命保険業界全体の資本要件の約45%の総リスクマージンをもたらすと報告した。業界は、これまでにこの水準が非常に過度であり、レビューを正当化するための技術的証拠を提供していると主張してきたが、EIOPAは何らの変更も想定していない。
残念なことに、EIOPAは、リスクマージンの現在の水準が妥当であるのか、さらには可能であるのか、そしてリスクマージンの概念の意図された目的に沿ったものであるかどうか、ですら考慮していないようにみえる。現在のリスクマージンが適切かどうかの分析は、ソルベンシーIIの現在の方法及び前提が意図されたように機能しているのかどうかに関心を持っている欧州委員会に提供されるべきである。
保険ヨーロッパはまた、EIOPAが、独自のイニシアティブで、委員会からの権限をもたずに、金利リスクの較正の見直しについて取り組むとのEIOPAの決定に強い懸念を繰り返した。
この問題は、ソルベンシーIIの開発中に重大な議論と論争の対象となったリスクフリー・レートと評価アプローチに非常に密接に関連しており、ソルベンシーII2020レビューにとって重要な焦点となる。したがって、現在、金利問題を個別に見直すことは不適切である。事実、保険ヨーロッパは、欧州委員会が正当な理由でそれを助言要求に含めなかったと考えている。金利に関する全ての変更は、2020年のレビューの一環として一緒に検討されるべきである。
同様に、保険ヨーロッパは、「コンバージェンス」が、現地市場の特性、条件及びリスクにかかわらず、全ての監督当局が最も慎重かつ制限的なアプローチを適用することを意味する、との助言案の提言について懸念を提起した。
これは、EIOPAが、適切な監督上の判断と対話を促すのではなく、市場全体の全ての保険会社に対して、単純かつ恣意的な制限を支持しているように見えるLAC DTにとって特に危険である。そのようなアプローチは、フレームワークのリスクベースの性質を打ち破り、フレームワークを既にあるものよりも遥かに保守的にするリスクを負う。
業界はさらに、EIOPAは、レビューの領域毎の単独評価とは対照的に、EIOPAがその助言において、提案の全体的な影響評価を提供すべきだと考えている。孤立した/個別のレベルで様々な提案を評価することは、全体的な影響が、ソルベンシーIIの目標、単純さとリスク感応度のバランス、業界への全体的な負担とコストをどのように支持するのかを評価するための信頼できる基盤を表すものではない。これらの全ての影響要素は実際に委員会からその助言要求において要請された。
さらに、現在のEIOPAの提案は、欧州の長期的な成長に影響を及ぼすと考えられ、欧州委員会は、そのような分野でEIOPAから適切な情報と助言を受けるべきである。