【インドネシア10-12月期GDP】前年同期比5.19%増~投資拡大で2期連続の成長加速

2018年02月05日

(斉藤 誠) アジア経済

インドネシアの2017年10-12月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.19%増と、前期(同5.06%増)から上昇するとともに、市場予想2の同5.10%増を上回った。

なお、2017年通年の成長率は前年比5.07%増(2016年:同5.02%増)とわずかに改善し、インドネシア銀行が予測した5.1%と概ね一致した。

10-12月期の実質GDP需要項目別に見ると、投資と政府消費の改善が実質GDP成長率の上昇に繋がった(図表1)。

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比4.98%増(前期:同4.95%増)と、若干上昇した。これまで堅調に推移していた輸送・通信が鈍化した一方、前期に伸び悩んだ食料・飲料とアパレルがやや持ち直した。

政府消費は前年同期比3.81%増(前期:同3.48%増)となり、前期に続いて予算執行が順調で堅調に拡大した。

総固定資本形成は前年同期比7.27%増と、前期の同7.08%増から小幅に上昇した。機械・設備(同22.31%増)が2期連続の二桁増となったほか、建設投資(同6.68%)が4期連続で上昇した。一方、過去1年間で二桁増が続いていた自動車(同2.75%減)は7期ぶりのマイナスに転じた。

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲0.57%ポイントとなり、前期から1.15%ポイント減少した。まず輸出は前年同期比8.5%増(前期:同17.01%増)と増勢が鈍化した。輸出の内訳を見ると、財輸出が同9.71%増(前期:17.70%増)と非石油・ガス輸出を中心に鈍化したほか、サービス輸出も同1.23%減(前期:11.98%増)と大幅に低下した。一方、輸入も鈍化したものの、伸び率は同11.81%増(前期:同15.46%増)と高水準を維持した。
供給項目別に見ると、第二次産業が低下する一方、第三次産業が上昇した(図表2)。

第二次産業は同4.22%増(前期:同4.77%増)と低下した。内訳を見ると、製造業が同4.46%増(前期:同4.85%増)、建設業が同7.23%増(前期:同6.98%増)とそれぞれ低下したほか、鉱業は前年同期比0.08%減(前期:同1.84%増)とゼロ成長となった。

第三次産業は同6.01%増(前期:同5.89%増)と上昇した。内訳を見ると、情報・通信が同8.99%増(前期:同8.82%増)、不動産が前年同期比3.73%増(前期:同3.60%増)、行政・国防が同6.43%増(前期:同0.69%増)とそれぞれ上昇した。一方、構成割合の大きい卸売・小売は同4.66%増(前期:同5.29%増)、ホテル・レストランは同5.49%増(前期:同5.69%増)、運輸・倉庫は同8.21%増(前期:同8.88%増)、金融・保険は同3.80%増(前期:同5.09%増)、ビジネスサービスは同9.25%増(前期:同9.37%増)と、それぞれ低下した。

また第一次産業は同2.24%増(前期:同2.77%増)と低迷した。
 
 
1 2月5日、インドネシア統計局(BPS)が2017年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

10-12月期GDPの評価と先行きのポイント

10-12月期は投資と政府消費の改善が続き、成長率が2期連続で上昇するなど漸く景気が上向いてきている。純輸出の悪化はバリ島アグン山噴火の影響で外国人訪問者数が大きく鈍化したことや、内需拡大で輸入が増加したことが主因だ。アグン山は1月にも再噴火するなどサービス輸出への悪影響は暫く続きそうであるものの、財輸出は海外経済の回復を背景に高めの伸びを維持しており、引き続き成長ドライバーとなりそうだ。

一方、民間消費は若干上昇したものの、5%の伸びを下回る回復感の乏しい状況が続いている。12月の実質小売売上指数は前年同期比2.5%増と低迷しており、同国経済の更なる成長加速にはGDPシェア最大の民間消費の回復が必要不可欠な状況だ。消費を巡る環境は低インフレ環境の継続(図表3)や高水準の消費者心理指数、そしてインドネシア銀行の金融緩和(2016年以降で計2.0%の利下げ)など明るい材料が豊富にある。しかし、賃金上昇ペースの鈍化や政府の税収拡大策などが民間消費を抑制している模様だ。

2018年の成長率は上向く可能性が高い。中央銀行は今年5.1~5.5%の成長を見込んでいる。海外経済の回復を背景に資源価格が上昇し、景況感が改善する資源関連産業を中心に設備投資が拡大するほか、政府主導のインフラ開発プロジェクトが進展して建設投資も景気の牽引役となりそうだ。民間消費は輸出と投資の拡大を背景に雇用・所得環境が改善するほか、今年6月に全国171の自治体で予定される地方選挙や来年の大統領選挙を控えたキャンペーン期間中の消費需要の増加が見込まれる。もっとも家計の消費性向の改善余地は限定的と見られ、消費の持続的な回復までは考えにくい(図表4)。

成長率を一段と押し上げるには、追加的な緩和が必要だが、金利の引き下げ余地は小さい。3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では利上げが確実視されているほか、石油価格の上昇が先行きのインフレ圧力が高まると予想されるためだ。もっとも1月の消費者物価上昇率は前年同月比3.3%と、中銀の物価目標2.5-4.5%の下方で推移しており、短期的な利下げの可能性も否定できない。また中央銀行は1月に預金準備率を緩和しており、融資拡大に積極的になっている。追加利下げとなれば低調な銀行融資が促進され、回復感の乏しい経済の成長ペースが加速するだけに、引き続き中央銀行の金融政策に注目が集まりそうだ。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠(さいとう まこと)

研究領域:経済

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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