病床削減に向けて県の権限は強まるか?-非稼働病床を中心に今後の方向性を考える

2018年01月23日

(三原 岳) 医療

■要旨

2025年の医療提供体制を定めるため、各都道府県が2017年3月までに策定した「地域医療構想」の進め方について、厚生労働省は昨年末に「地域医療構想の進め方に関する議論の整理」という文書を策定した(以下、「進め方」)。「進め方」では病床再編に向けた議論の進め方や留意点、関係者への情報共有方法などに加えて、都道府県から開設許可を得ているのに稼働させていない「非稼働病床」について、都道府県が削減する可能性に言及した。

では、民間医療機関の病床削減や病床再編について、都道府県はどこまで権限を行使できるのだろうか。日本は民間中心の医療提供体制であり、都道府県が果たせる役割は小さいが、地域医療構想の推進に際して都道府県の権限が「強化」されたほか、「進め方」では非稼働病床の削減について、公的医療機関に「命令」、民間医療機関に「要請」「勧告」できる点に言及することで、やや踏み込んだ内容となっている。

本レポートでは「進め方」の内容に加えて、これまでの医療計画の病床規制に関する法的根拠、地域医療構想で「強化」された権限などを考察し、厚生労働省、日本医師会、都道府県は権限行使に慎重であることを指摘する。一方、財務省などは地域医療構想を医療費適正化の手段とみなし、都道府県の権限を強化するよう求めており、こうした狭間の中で非稼働病床の取り扱いが焦点となる可能性を論じた上で、都道府県の権限行使は一種の「劇薬」であり、民間医療機関との合意形成をベースとする必要性を指摘する。


■目次

1――はじめに
2――地域医療構想と都道府県の権限
  1|地域医療構想の概要
  2|民間中心の提供体制
  3|地域医療構想で「強化」された権限
  4|昨年末に国が示した「進め方」
3――権限行使を巡る関係者の動向
  1|「強化」された都道府県の権限についての動向
  2|経済財政諮問会議、財務省のプレッシャー
4――非稼働病床を巡る動向
  1|非稼働病床を見直す意味合い
  2|非稼働病床に関する都道府県の対応
5――おわりに~合意形成の優先を~

保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳(みはら たかし)

研究領域:

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴

プロフィール
【職歴】
 1995年4月~ 時事通信社
 2011年4月~ 東京財団研究員
 2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
 2023年7月から現職

【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会

【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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