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患者申出療養制度の創設(2016年4月)
2016年4月、患者からの申出を前提とする新たな保険外併用療養(混合診療)の仕組みとして、先進的な医療について患者の選択肢を拡大するために、患者申出療養制度が創設された。
とくにその眼目は、患者自身の希望による国内未承認薬の使用にあるとされ、厚生労働省も、
「未承認薬等を迅速に保険外併用療養として使用したいという困難な病気と闘う患者の思いに応 えるため、患者からの申出を起点とする新たな仕組みとして創設されました。 将来的に保険適用につなげるためのデータ、科学的根拠を集積することを目的としています」
と説明している
11。
患者申出療養を審議する第3回患者申出療養評価会議(2016年9月21日)においては、第1号となる患者申出療養として、腹膜播種陽性(がんが腹膜に転移している状態)または腹腔細胞診陽性(腹膜への転移が認められない場合でも、がん手術中に腹腔内に生理食塩水を注入し、採取した洗浄液にがん細胞が認められる状態)と診断された胃がん(=予後の悪い、末期の胃がん)に対する、パクリタキセルという抗がん剤(赤い実をつけるイチイ科の植物から抽出された成分で作成)の腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1(経口の抗がん剤)の内服併用療法の利用が承認された。
この治療方法は、2009年に先進医療として承認されているが、適格基準外とされた患者から申出があり、承認されたものである。患者が自己負担する費用は、44万6千円と見込まれている(初期費用6万2千円+投与1回あたり1万6千円×平均的な実施回数24回)
12。
さらに、第4回患者申出療養評価会議(2017年2月6日)においては、第2号として、重症心不全患者に対する、耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法が承認された。
患者が自己負担する費用は、419万6千円と見込まれている
13。
第5回患者申出療養評価会議(2017年4月13日)においては、第3号として、難病である難治性天疱瘡患者に対する、リツキシマブ投与(海外では追加治療の第1選択薬として使用)、第4号として、19 歳以下の難治性の髄芽腫(神経系に発生する悪性腫瘍)患者に対する、抗がん剤チオテパを用いた自家末梢血幹細胞移植療法が承認された(自己負担する費用はそれぞれ4万円、197万6千円)
14。
患者申出療養創設の目的は、
「未承認薬等を迅速に保険外併用療養として使用したいという困難な病気と闘う患者の思いに応えるため」
15
とされており、こうした目的に沿った承認が行なわれている。
11 「患者申出療養の概要について」、厚生労働省ホームページ。
12 「患者申出療養の新規届出技術に関する事前評価結果等について」、『第3回患者申出療養評価会議資料』(2016年9月21日)、厚生労働省ホームページ。
13 「患者申出療養の新規届出技術に関する事前評価結果等について」、『第4回患者申出療養評価会議資料』(2017年2月6日)、厚生労働省ホームページ。
14 「患者申出療養の新規届出技術に関する事前評価結果等について」、『第5回患者申出療養評価会議資料』(2017年4月13日)、厚生労働省ホームページ。
15 「患者申出療養の概要について」、厚生労働省ホームページ。
3――先進医療の技術数・患者数・金額などの推移