報告書では、第3節で、超高齢者層の死亡率について研究した、近年の代表的な論文
3について、検討を行っている。それぞれの論文の結論を、簡単に見ていこう。
(1) Gavrilov and Gavrilova (2011, 2015)
国際長寿命データベース(the International Database on Longevity)の110歳到達者のデータを分析。その結果、110歳以上では、死亡率(正確には死力(ある年齢における瞬間の死亡率))は年齢とともに指数曲線的に伸びる、とした。
(2) Ouellette and Bourbeau (2014)
Gavrilov and Gavrilovaの2011年の論文を検証すべく、カナダ・ケベック州の教会教区記録簿(教区民の洗礼・結婚・死亡を記している)の100歳到達者のデータを分析。その結果、同論文は死亡データ数が少ない上に、死亡率の伸びを抑制する要素が考慮されていない。実際には、虚弱な人は超高齢に至る前に死亡するため、超高齢では、死亡率の伸びが減速する、などとした
4。
(3) Rau et al (2016)
6つの人口の多い低死亡率国
5の高齢者死亡データをもとに、死亡率のモデル化を何種類か行い、当てはまりのよさを比較・評価。その結果、死亡率(正確には死力)の伸びが減速していき、ある水準の高原状態に至る、とするモデル
6が高評価となることを示した。(なお、報告書では、この論文は幅広い国々を、経時的に分析しているため有益である、と論じている。)
報告書では、検討の結果、超高齢者の死亡率が、年齢とともに指数曲線的に伸びるのではなく、減速するとの前提を置くこととしている。また、併せて、(3)の論文から、120歳で死力がほぼ1となることが支持されているとして、これをモデルに織り込んでいる。その上で、いくつかの既存の死亡率曲線について、超高齢者死亡率を再作成して、既存のものとの比較・評価を行っている。
3 それぞれ、(1)"Mortality measurement at advanced ages: a study of the Social Security Administration Death Master File", "Mortality of Supercentenarians: Does It Grow with Age?" Gavrilov and Gavrilova (2011, 2015)、(2)"Measurement of Mortality among Centenarians in Canada" Ouellette and Bourbeau (2014)、(3)"Where is the level of the mortality plateau?" Rau et al (2016)
4 この他に、超高齢では1年の間に死亡率が変化すること、年齢報告が不正確な場合があることなども指摘されている。
5 ベルギー、フランス、ドイツ、西ドイツ、イタリア、日本。いずれも2005年~2010年に、1,000万人以上の人口を有する。
6 ゴムパーツモデルを拡張したガンマ・ゴムパーツモデルと呼ばれるもので、年齢の上昇とともに、死力がある高さの高原状態に至る。ゴムパーツモデルは、高原の高さを無限大としたものに相当する。
5――おわりに (私見)