日銀短観(9月調査)~大企業製造業の景況感は10年ぶりの高水準、先行きは幅広く悪化

2017年10月02日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

3.需給・価格判断:内外需給は堅調、販売価格引き上げの動きは引き続き限定的

(需給判断:海外を中心に改善)
大企業製造業の国内製商品・サービス需給判断D.I.(需要超過-供給超過)は前回比1ポイント上昇、非製造業は横ばいであった。製造業の海外需給は2ポイント上昇した。内外需要ともに堅調だが、特に海外が牽引役になっている。

先行きについては、国内需給は製造業、非製造業ともに1ポイント低下と需給弱含みへの警戒が燻っている。製造業の海外需給も横ばいに留まっており、慎重な見方が強い。

中小企業の国内需給については、製造業が前回から2ポイント上昇、非製造業は1ポイント上昇とともに改善した。一方、製造業の海外需給は4ポイント上昇と大きく改善している。先行きについては、国内需給は製造業で1ポイント低下、非製造業で2ポイント低下。製造業の海外需給は1ポイント低下と、それぞれ弱含みが見込まれている(図表4)。
 
(価格判断:販売価格引き上げの動きは限定的)
大企業製造業の販売価格判断D.I. (上昇-下落)は前回から1ポイント上昇したが、非製造業は1ポイント低下した。また、3ヵ月後の先行きについては、製造業、非製造業ともに2ポイント低下している。人手不足の強い運送業界や外食業界などで一部値上げの動きがみられるが、今のところ全体への広がりはみられない(図表5)。

中小企業の販売価格判断D.I.は製造業で2ポイント上昇、非製造業で1ポイント上昇した。先行きについては、製造業・非製造業ともに1ポイントの上昇に留まることが見込まれている。全体的に小動きであり、大企業同様、値上げの動きが積極化している様子はうかがわれない。

4.売上・利益計画: 売上・利益ともに上方修正

4.売上・利益計画: 売上・利益ともに上方修正

17 年度収益計画(全規模全産業)は、売上高が前年度比2.2%増(前回は2.0%増)、経常利益は1.0%減(前回は4.2%減)となった。売上・利益ともに上方修正が行われており、堅調な内外需要や想定為替レートの円安修正がプラスに寄与したとみられる。

17年度想定為替レート(大規模製造業)は109.29円(上期109.46円、下期109.12円)と、前回(108.31 円)から小幅に円安方向へ修正された。今年度上期のドル円レート(4/3~9/29)は平均111円程度、足元も112円台で推移しており、計画はやや円高水準にある。先行き不透明感を考慮して保守的に据え置かれているとみられるが、今後、ドル円レートが横ばいないし円安方向に推移した場合、収益計画の上方修正要因となる。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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