3|女性専用外来の拡充が進んできた
女性に特化して、医療サービスを行う医療施設として、一部の医療機関では、女性専用外来が設けられている。女性専用外来は、婦人科を中心に、内科、外科、精神科、皮膚科、形成外科など幅広い診療科に渡ることが多い。
通常、女性専用外来では、女性医師が、患者1人に20~30分の時間をかけて、じっくりと診察、カウンセリング、治療を行う。例えば、局部に生じた病変や、不定愁訴を伴う精神的な悩みがある場合、一般外来の男性医師による診療では、患者に羞恥心や恐怖心が伴うことがある。このような場合に、女性専用外来は、患者にとって救いの場になる、とされている。
女性専用外来を開設する医療施設は、徐々に増加している。日本では、2001年に、最初の女性専用外来が開業している
72。その後、2004年までに、全都道府県で開設された。性差医療情報ネットワークのホームページに掲載されている開設病院数
73を見ると、2006年3月には301病院、2014年2月には317病院で女性専用外来が開設されている。また、2017年8月には、女性専用外来を紹介するサイト
74に、389病院が掲載されている。女性専用外来の拡充は、徐々に進んできているものと言える。
72 2001年5月に、鹿児島大学医学部付属病院に開設された。
73 「女性外来マップ」(特定非営利活動法人 性差医療情報ネットワーク ホームページ)(「2014年2月12日現在」のアドレス http://www.nahw.or.jp/hospital-info)
74 「病院なび」(株式会社eヘルスケア)(アドレス https://byoinnavi.jp/k01)
4|女性医療に関する包括的な統計データは、とりまとめられていない
女性医療は、日本に性差医療の考え方が紹介された1999年以降、徐々に浸透してきた。実際に、医師や外来施設の面で、その医療提供体制は、徐々に拡充している。しかし、増大するニーズを満たす点を踏まえれば、まだ、女性医療の体制整備が完了したとは言えない。
女性医療に関するデータ整備も、同様である。例えば、女性専用外来について、各医療施設ごとの診療実績はあっても、医療施設を横断したデータとしては、とりまとめられていない。このため、女性医療に関して、どういう悩みを持った患者がどれくらい来院するのか。通院回数や1回の診察時間はどのくらいなのか、といった情報が、日本全体の集計データとして、把握できない状況にある。
今後、日本をはじめ各国で、根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine, EBM)
75の展開により、医療者の経験や、患者の価値観を、根拠と統合した上で、患者の医療を向上させ、医療の実効性を高めていくことが目標とされている。女性医療も、その例外ではない。限られた数の女性医師や、産婦人科医師を、どのように配置・活用して、女性医療の質や実効性を高めていくべきか。病院の女性専用外来をどのように拡充させて、どのような運用によって、患者のニーズに応えていくべきか。このような様々な課題を検討する前提として、まず、女性医療に関する、正確で包括的な統計データの整備が必要と考えられる。
5|女性医療に関する、統合医療の展開は道半ば
女性医療は、身体的症状としての病気を治すことだけを目的とはしていない。患者が抱える心理的症状あるいは社会的な悩みを理解し、生活スタイル、精神状態など、全人的かつ包括的に、患者を診療することが求められる。
現在、医療の中核をなしている近代西洋医学に加えて、食事・運動・生活スタイルの指導や、各種の相補・代替医療を組み合わせて、提供する動きが始まっている。これは、「統合医療」と呼ばれている。統合医療について、厚生労働省の検討会では、「近代西洋医学を前提として、これに相補(補完)・代替療法や伝統医学等を組み合わせて更にQOL(Quality of Life: 生活の質)を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、場合により多職種が協働して行うもの」と位置づけている。
相補・代替医療の例としては、次の図表のものが考えられる。