小さな町や地域、自治会や職場でも気軽に実施できるようツール・キット(手引き書)が作成され(図表4参照、表紙にはインスパイア・マークが掲載されている)、1件当たり平均23人のボランティアが運営を支えた。ロンドン2012大会終了後、同じ名前の組織が設立され現在も活動は継続されている。
ウエスト・ミッドランズ地方では、4年間に1,000件近い文化オリンピアードの事業が実施されたが、そのうちの601件がこのコミュニティ・ゲームズだった。その記録資料
12の巻末には、700を越える事業パートナーの名前が記載されている。そこには、文化施設や芸術機関、芸術団体に加え、ミッドランズ地方内の市町村、小中学校、高校、大学、ユースクラブ、子どもセンター、図書館、教会、ホスピス、テニスクラブ、ランニングクラブ、ボートクラブ、レジャーセンター、温泉ガイド等々、多種多様な団体が名を連ねており
13、文化オリンピアードが、専門的な芸術機関から市民団体まで極めて幅広い組織や団体によって支えられたことがわかる。
このようにインスパイア・プログラムは、草の根の市民参加型の文化イベントを英国全土で展開するという点で大きな成果を残した。その際、ロンドン2012大会エンブレムと同様のデザインのインスパイア・マークが大きな役割を果たしたことは容易に推測できる。全国の小さな町や地域でも、自分たちが主催する事業のチラシや会場のバナーなどにロンドン2012大会のエンブレムと同じような公式マークを使用できることが、大きなインセンティブとなったと思われるためである。
8 DCMS, 2012 Games Meta Evaluation: Report 5 Post-Games Evaluation Summary Report, June 2013
9 Knight, Kavanagh and Page, London 2012 Olympic Games and Paralympic Games Inspire programme legacy survey: United Kingdom, February 2013
10 ロンドン2012大会のレガシーとなるような文化、スポーツ活動を支援することを目的に、ビッグ宝くじ基金、文化・メディア・スポーツ省、アーツカウンシル・イングランドからの4,000万ポンド(約68億円)の基金で2007年に創設された助成機関。オリンピック・パラリンピックの価値やビジョンに基づき、英国全土で幅広い文化事業を支援した。
11 Cultural Research Analyst, West Midlands Cultural Observatory, Cultural Olympiad in the West Midlands: An evaluation of the impact of the programme (2008-2012), Nov. 2012
12 Arts Council England, The Cultural Olympiad and London 2012 Festival in the West Midlands
13 厳密には、コミュニティ・ゲームズ以外の事業パートナーも含まれている。
3――ロンドン2012フェスティバルのブランド・ガイドライン:インスパイア・マークの成果を発展