図表でみる中国経済(人口問題編)-「人口ボーナス」から「人口オーナス」へ、バブル崩壊の遠因になる恐れも

2017年05月30日

(三尾 幸吉郎)

3――バブル崩壊の遠因になる恐れも

また、人口構成の変化がバブル崩壊の遠因になる恐れもある。中国では住宅バブル問題が深刻化しており、上海の住宅価格は平方米当たり25,910元(2016年)と10年前の3.7倍に上昇した。当研究所の試算では年間平均賃金の14.1年分に相当し、4~6倍 とされる合理的水準を大幅に上回るとともに、1990年前後の日本のバブル期並みの水準となった1(図表-6)。
日本のバブル崩壊の原因は、大蔵省(現在の財務省・金融庁)による総量規制や日銀の公定歩合引き上げなど様々な指摘があるが、住宅に対する需要の変化も見逃せない。日本の人口動態を見ると、住宅の主要取得層である25-49歳の人口が1980年前後をピークに減少トレンドに転じていた(図表-7)。
一方、中国の人口動態を見ると、住宅主要取得層(25-49歳)は現在がほぼピークで、今後は長期に渡って減少傾向を辿るものと見られる(図表-8)。中国の住宅価格は、ある年は下落してもその翌年には最高値を更新するというような右肩上がりの展開が続いてきた(図表-6)。そして、いずれバブルは崩壊すると言われて久しいが崩壊せず現在に至る。その背景のひとつは住宅主要取得層が増加トレンドだったことがある。しかし、今後はその住宅主要取得層が減少し始めるため、金融引き締めなどをカタリスト(触媒)としてバブルが崩壊する可能性は以前よりも高まっている。中国でバブルが崩壊すれば日本経済へ悪影響が波及する恐れがあるだけに、今後の動向に注目したい。
 
1 住宅バブルに関しては「図表でみる中国経済(住宅市場編)~住宅バブルの現状と注目点」基礎研レター 2016-11-1を参照
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