「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方

基礎研REPORT(冊子版) 2017年4月号

2017年04月07日

(天野 馨南子) 子ども・子育て支援

1―はじめに

昨今、年の差婚についてはメディア等で様々に取り上げられているところである。そこで本稿では、国の大規模データ分析により、日本における未婚者の「年の差婚希望」ならびにその希望の「叶い方」を俯瞰する。少々驚きの結果となったので、ご紹介したい。

2―未婚男女の年齢差ターゲットは?

2015年に行われた国の調査データでは、5人に1人以上(23%)の未婚男性が5歳以上年下女性との結婚を希望している[図表1]。ただし、同年齢から2歳年下までのほぼ同年齢婚希望の未婚男性が最も多く、約6割に達する。年上女性希望が最も少ない(6.7%)。
次に、男性の年の差婚希望はさておき、女性も同様のライフデザインをしていなければ叶う可能性は限りなく低くなる。女性側の希望を見てみたい。図表1では約6割の女性が同年齢から2歳年上までを希望している。男女とも約6割が同年齢ゾーン希望であり、希望割合がマッチングしているといえる。

ただ、女性の約8割が同年齢から4歳上までの近い年齢の年上男性を希望している一方で、同年齢から4歳年下までの女性を希望している男性は約7割にとどまり、5歳以上年下女性を希望する男性割合がそれにあう希望をもつ女性の割合よりも高くなっている。つまり、男性が若い女性を希望することによる女性との希望ミスマッチがみてとれる。

データからは男性が4歳年下女性までとの結婚を希望するならば約8割の女性の希望と合致しマッチング可能性が非常に高くなる(女性の場合は6歳上までの男性希望すればマッチング可能性が非常に高くなる)と指摘できる。

3―成婚カップルの年齢差の現実は?

希望はさておき「実際出会ってみなければわからない」という議論は当然ありうる。年齢差だけで決められるほど現実の結婚は安易なものではないはずである。そこで、2015年に成婚したばかりの初婚カップルの実際の年齢差のデータを見ることにしてみよう。
図表2から、以下の結果が判明した。

○男性が年上パターンで、1歳上から4歳上までの結婚は57%。希望と現実との乖離が割合的にはほぼ見られない。
○男性が7歳以上年上婚は11%で男性の希望をやや上回る。
○男女とも1割を切る少数派希望の年上妻婚が現実では24%に達しており、希望と現実との間に顕著な乖離が生じた。 

2015年における年上妻の「姉さん妻婚」は実に女性の希望の約6倍、男性の希望の約4倍にものぼり、希望から照らしてみるとあまりにも意外な「年の差婚」の実態が現れた。

4―4組に1組が「姉さん妻」時代

最後に初婚夫婦の年の差の長期推移を示してみたい[図表3]。45年間で夫が年上の伝統的パターンは約8割から約6割へと大きく減少。一方、年上妻婚が増加した。2015年では約4組に1組が姉さん妻婚となっている。
現実は「出会ってみなければわからない」は極めて正しい議論であることを示している。ただ、近年では、希望との乖離の方向性が「年上女性・年下男性がよい」という姉さん妻婚傾向となるようである。1歳年上の「金のわらじ婚」パターンが最も多く、全体の約1割を占める。次に多いパターンは妻が4歳以上年上である。ドラマ「逃げ恥」の百合と涼太カップルではないが、想像よりも年の差のある姉さん妻婚が成立している様子がうかがえる。

データが示す現実は、年上夫という伝統的結婚の急激な減少と姉さん妻婚の増加という、一般のやや想像を超えると思われるトレンドとなった。

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子(あまの かなこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴

プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向


【委員歴/ご依頼順(現職優先)】

1.政府
・【総務省統計局】
「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】
「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024~2025年度)
「令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員」(2023年度)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】
「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【内閣府男女共同参画局】
「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府】
「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~2018年)
「地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)

2.自治体
・【富山県】
「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
「富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員」(2022年)
・【高知県】
「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】
「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
・【愛知県豊田市】
「豊田市総合計画推進会議 有識者委員」(2025年度~)
・【石川県】
「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【長野県伊那市】
「伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般」(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】
「子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー」(2021年)
・【愛媛県松山市】
「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会・結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)

3.民間団体
・【東京商工会議所】
東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】
えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】
「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
・【中外製薬株式会社】
「ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会(通称:研究倫理委員会) 委員」(2020年~)
・【主宰研究会】
地方女性活性化研究会(2020年~)


日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー

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