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天才数学者ラマヌジャン-「奇蹟がくれた数式」を観て-
2017年03月21日
(中村 亮一)
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ラマヌジャンの功績
あまり難しい話は避けて、比較的わかりやすいものを紹介する。
映画の中では「分割数」と呼ばれる問題が描かれている。「分割数(partition function)」p(n)とは、自然数nの分割(nをその順番の違いを除いて自然数の和として表す方法)の総数を表す関数である。例えば、4は、4=1+1+1+1=1+1+2=1+3=2+2 のように5通りに表すことができるので、p(4)=5 となる。
この分割数について、ラマヌジャンとハーディはその漸近式として、
となることを発見している。さらには、ラマヌジャンは、以下を発見している。
p(5n+4)≡0 (mod 5) 即ち、p(5n+4) は5の倍数になる
p(7n+5)≡0 (mod 7) 即ち、p(7n+5) は7の倍数になる
p(11n+6)≡0 (mod 11) 即ち、p(11n+6) は11の倍数になる
分割数は、数学や物理学の研究で応用されている。
さらに、ラマヌジャンは、モジュラー関数と呼ばれる考えをもとに、次の円周率の公式を発見している。
なお、木村俊一氏(広島大学大学院研究科教授)によれば、「ラマヌジャンが発見した擬テータ関数はブラックホールの研究に登場し、整数論的な起源を持つタウ関数についての予想は、ラマヌジャングラフとして回線の切断に強いインターネット網の研究につながる。」、「深い水脈を通って、ラマヌジャンの研究は今ようやく理解され、役立ち始めているのである。」(「奇蹟がくれた数式」公式サイトより)とのことである。
まとめ
数学者をモデルとする映画や文学作品はこれまでにもいくつか見られる。
以前の研究員の眼
で取り上げた「博士の愛した数式」も、実在の数学者を対象としたものではないが、主人公は数学者で、映画の中でいろいろと数学の話題が出てくることについて触れた。
数学者が大成するためには、これまでに誰も考えたことのないような発想で困難な問題を解決していくことが求められる。その過程では、周囲の人には必ずしも十分に理解されない状況も経験することもあり、そうしたエピソードがこうした映画や文学作品の中で描かれていたりする。
こうした事実に触れることは、世俗的な業務に追われて、今ひとつ純粋さを失いつつある日常生活の中で、ある意味において新たな感動を呼び起こされてくれる。
なお、映画「奇蹟がくれた数式」については、数学に興味の無い方でも、文化・歴史・宗教等の様々な違いを背景にしたエピソードが描かれていることから、いろいろと感じさせてくれるものが多いのではないか、と思われる。
現在、この映画を上演している映画館は極めて限定されている。今後もどの程度の上演機会があるのかはわからないが、興味がある方は、3月下旬にDVD等もリリースされるようなので、そちらをご覧いただければと思っている。
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