気候関連財務開示と今後の展望-BHPビリトンの開示事例を参考として

2017年03月21日

(江木 聡)

■要旨

企業の情報開示について世界で注目を集める動きがある。金融安定理事会によって招集された「気候関連財務ディスクロージャー・タスクフォース」が昨年末に公表した提言だ。気候変動が企業に及ぼす影響を財務の面から開示するよう働きかける内容である。本稿はこの提言の概要と、現時点の海外事例を確認し、今後を展望するものである。

本稿で紹介するBHPビリトンの気候関連財務開示の先行事例は、本業喪失の可能性すらある業界の最大手が、深刻な影響をはらむ課題に臨んで、開示をむしろ「攻め」に活用し、自らの事業基盤は長期的に磐石であると主張する機会に転換した戦略と見ることができる。

日本企業は、海外の政府や投資家から外堀を埋められる前に、気候関連課題に対する日本の姿勢と実力を世界に知らしめる手段として、TCFDの提言を活用することを検討してはどうだろうか。

■目次

1――TCFDとは
2――提言の概要
3――シナリオ分析を活用した開示の先行例 ~ BHPビリトン(豪)
4――提言の今後の取り扱い
5――日本産業界への期待
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