金相場の先行きはどうなる?~金融市場の動き(3月号)

2017年03月03日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
  1. (トピック) 今年に入ってから金相場が堅調に推移しており、昨日終値も1232ドル台と高値を維持している。本来、金価格は「ドルの強弱」、「米金利」と逆相関関係にあり、ドル・米金利が上昇(下落)すると金価格が下落(上昇)するという関係性が強い。しかし、2月には金価格とドルが順相関関係になり、ドルが上昇するにも関わらず、金価格が上昇するという事態が起きた。また、現在の金価格は、昨年の金価格とドル、米金利の関係性から導かれる理論値に対して、100ドル前後も上振れている。欧州の選挙やBrexit、トランプ政権の政策運営など世界には多くのリスクが存在しており、安全資産である金への需要が発生しているためと考えられる。今後の金価格については、当面は引き締めに向かう米金融政策に市場の関心が向かいやすいこと、トランプ政権の景気刺激策への期待が高まりやすいことから下落する可能性が高い。ただし、欧州の選挙への警戒が少なくとも5月上旬まで続くとみられることから、昨年末の水準(1151ドル台)を割り込むことはないと見ている。また、その後についても、昨年来の想定外の事態(英国のEU離脱決定、トランプ大統領誕生、欧州諸国での反EU派の台頭など)の根底には人々の不満という根深い構造的な問題がある点を踏まえれば、様々な不測の事態が危惧される。また、トランプ政権には従来の政権のような安定感は期待しづらいほか、中国経済も大きな構造問題を抱えたままだ。世界経済は不透明感の強い状況が続き、金の需要に繋がるだろう。従って、米国の利上げが意識される局面では下振れるものの、年内の金価格は基本的に1200ドル~1300ドルでの底堅い展開が予想される。
     
  2. (金融市場) 米国の早期利上げ観測、トランプ政権の景気刺激策への期待から、当面ドルが強含む展開が予想される。長期金利はやや上昇を見込んでいる。
■目次

1.トピック:金相場の先行きはどうなる?
  ・崩れた金価格とドルの逆相関関係
  ・価格水準も理論値を上回る
  ・金価格は底堅い展開に
2.日銀金融政策(2月):日銀の米国への強い関心があらわに
  ・(日銀)現状維持(開催無し)
3.金融市場(2月)の動きと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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