自分の考えを論理的に語る「雄弁」は、重要な能力だ。スピーチの名手である米国・オバマ元大統領の演説を聞くと、言葉の持つ力は偉大だと思う。正々堂々と自己主張もできずに黙り込んでいることは責任放棄に過ぎない。しかし、それでも自己主張できない人がいることを慮り、「沈黙」に耳を傾けることを忘れてはならない。イギリス人の思想家トーマス・カーライルの『衣服哲学』に、『沈黙は金、雄弁は銀』("Speech is silver, silence is golden")という格言があるが、本当の「沈黙」とは、「神の沈黙」が示すような言葉にできないほど深い意味が込められた「声なき声」のように思える。