1|今回の報告書の位置付け
ソルベンシーII指令では、LTG措置と株式リスク措置のレビューを2021年1月1日までに行うことを要求している。このレビューの一環として、EIOPAは、LTG措置と株式リスク措置の適用の影響について、毎年、欧州議会、理事会、欧州委員会へ報告することが求められている。
今回の報告書は、2016年にソルベンシーIIが導入されて以降のLTG措置と株式リスク措置に関する最初の年次報告書に相当する。その意味で大変注目されるものであった。
2|今回の報告書の構成
今回の報告書は、3つの主要なセクションで構成されている。
最初のセクションでは、LTG措置と株式リスク措置の、会社の財政状態への全体的な影響、保険契約者保護への影響、消費者保護と商品の入手可能性への影響、投資への影響、金融安定性への影響について、採り上げている。
レポートの2番目のセクションでは、措置毎の国別の適用状況やその財政状態への影響等の分析結果を報告している。
3番目のセクションは、次の3つの主題的な焦点で構成されている。
(1)措置を使用するための承認プロセス
(2)EIOPAが計算し公開したリスクフリー金利に関する技術情報
(3)EIOPAが計算し公表した株式リスクサブモジュールの対称調整に関する技術情報
なお、EIOPAは、これらの主題的な焦点に関して、各年次報告書において、LTG措置及び株式リスク措置の様々な側面について、引き続き分析する予定としている。関連する利用可能なデータ、監督慣行及び措置の使用又は認知された影響におけるその他の進展に従って、毎年異なる焦点が選択されていくことになる。焦点は、最終的に、2020年までに、EIOPAの意見を支えるために必要となる全ての側面をカバーしていくことが予定されている。
EIOPAは、2020年に、それまでに提出された年次報告書に基づいて、LTG措置及び株式リスク措置の適用評価に関する意見を欧州委員会に提出することを予定している。
今回のレポートでは、最初のセクションの「(LTG措置と株式リスク措置の)会社の財政状態への全体的な影響」を中心に報告する。
3|今回の報告書の基礎データ
この報告書に使用されたデータは、(A)NSAs(National Supervisory Authorities:国家監督当局)への保険及び再保険会社の報告(①ソルベンシーII開始時貸借対照表、②第1四半期報告書)、(B)EIOPAの2016年の保険ストレステスト、から採られている。
特に、LTG措置及び株式リスク措置を使用する会社の財政状態への影響については、NSAsへの会社の報告には含まれていないので、ストレステストから得られたデータに基づいている。ストレステストは、EEA(欧州経済地域)の30カ国から、生命保険市場の77%をカバーする236の会社が参加している。従って、今回の報告書では、全ての保険及び再保険会社への影響は含まれていない。EIOPAのLTG措置及び株式リスク措置に関する来年度の2017年の報告書で、全ての会社の財政状態への影響が含まれてくることになる。
なお、EIOPAは、LTG措置と株式リスク措置の影響に関して、NSAsの経験を確認するためのアンケートを実施しており、それらに基づく結果についても、報告書に盛り込まれている。
3―LTG措置及び株式リスク措置とは