九州のインバウンド観光需要-九州における訪日外国人旅行者の特性と需要動向

2017年01月06日

(竹内 一雅)

3. 九州における外国人宿泊者数

1)改善が続くホテル客室稼働率・客室料金
週刊ホテルレストランのデータによると、近年、福岡市内の主要ホテル客室稼働率は上昇が著しく、熊本地震が発生した2016年も高水準で推移している(図表-15)。客室稼働率の上昇に伴い、客室料金も上昇傾向にある(図表-16)。

県別の客室稼働率は、熊本地震が発生した4月に、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県で大きく低下したが、その後、「九州ふっこう割」などの政策効果もあり、稼働率は大幅に回復した9(図表-17)。宿泊施設のタイプ別にみると、リゾートホテル以外では県別の大幅な稼働率格差はなくなっているようだ(図表-18)。
 
9 宿泊旅行統計2016年8月~10月の佐賀県と大分県の総客室稼働率(第2次速報値)が同じ数値で推移しており違和感がある。今後、確報において修正される可能性があるのではないかと感じている。
2)外国人の延べ宿泊者数-熊本地震の影響から回復へ
外国人の延べ宿泊者数は、訪日外国人旅行者数の伸びを反映して、全国同様、九州でも大幅な増加が続いてきた。熊本地震の発生後に大幅に減少したが、その後、回復が進んでいる(図表-19)。九州への外国人入国者数(図表-6)に比べて、外国人の延べ宿泊者数の落ち込みが大きいのは、熊本地震後に、宿泊需要を生まないクルーズ船による入国者が急増したためである10

日本人を含めた総延べ宿泊者数の停滞は熊本地震の影響だけではない。全国でも、日本人延べ宿泊者数は2015年末から前年比での減少が始まっている(図表-20)。九州の9月以降の日本人延べ宿泊者数の減少が、全国の減少と比べ小幅に留まっているのは、「九州ふっこう割」などの政策効果が大きかったためと思われる。九州では熊本地震後に外国人の延べ宿泊者数の減少が顕著であったが、九州全体としては政策効果にも関わらず、日本人客減少による影響の方がはるかに大きかった。

外国人の延べ宿泊者数は、熊本地震直後に熊本県・大分県での大幅な減少(前年比)と福岡県での増加幅の縮小(同)がみられた(図表-21、巻末参考図表)。その後、大分県では前年比でプラスになるまで回復しているが、熊本県では震災後からの回復がなかなか進んでいない11。また、長崎県では外国人宿泊者数の前年比減が続いている。
 
10 クルーズ船での入国者は、基本的にホテルなどには宿泊しないため、延べ宿泊者数の増加への貢献は小さい。
11 熊本県では熊本地震により多くの宿泊施設が影響を受けた。観光庁「ゴールデンウィーク期間中の熊本・大分の宿泊施設の営業状況について(第2報)」、ANAセールス「熊本地震における宿泊施設営業状況」などを参照のこと。
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