トランプ相場の調整リスク~マーケット・カルテ1月号

2016年12月16日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

円安ドル高の進行が止まらない。12月入り後も、トランプ新大統領の掲げる経済政策への期待が続いたほか、14日のFOMCで2017年の想定利上げ回数が引き上げられたことを受けて、足元では1ドル118円台までドル高が進んでいる。

思いのほかドル高が進み、目先も120円をトライする可能性を否定できないが、17年序盤にかけて一旦調整するリスクが高いという見方に変更は無い。現在の市場は同氏の掲げる極端な政策のうち景気押し上げ材料に対する期待を大きく織り込んでいるが、都合の良すぎる解釈だ。同氏が期待に応えることは難しく、次第に限界や負の側面が見えてくることで期待が剥落し、一旦揺り戻しの円高が発生するだろう。また、既往の急速な米金利上昇とドル高は米国経済にとって逆風になるうえ、新興国からの資金流出懸念も高めるため、リスク回避的な円買いに繋がる可能性もある。トランプ氏によるドル高牽制にも警戒が必要になる。3ヵ月後は110円~115円のレンジ内と見ている。

ユーロも今月に入って対ドルでは下落しているが、リスク選好的な円売りが勝り、ユーロ円は足元で123円台に上昇している。ただし、欧州では来年前半にオランダ議会選や仏大統領選という重要な選挙が相次ぐ。次第に政治リスクがユーロの重石となるため、3ヵ月後の水準は現状比で円高ユーロ安と予想する。

長期金利は、トランプ期待や米利上げ加速観測に伴う米金利上昇の波及によって上昇し、足元では0.0%台後半に達している。ただし、指し値オペなど日銀の金利抑制策への警戒から上昇余地は限られる。また、ドル高同様、米金利上昇は長続きしないと見られ、上昇が止まればプラス圏にある国債に資金が還流してくるだろう。3ヵ月後の水準は0.0%台前半と見込んでいる。
(執筆時点:2016/12/16)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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