2|8つの最善策
といっても、調査結果自体は、どの機関(投資部門、投資委員会、CIO、経営会議など)が、どんな頻度(年一度、2年に一度など)で、どのような点(運用対象、リスク選好など)について、投資方針を変更しているかなどについて、個々の国ではなく、アンケート集計の形で公表されている。国によって様々な状況があるという点はこれでわかるのだが、具体的にどの国かということは明らかにされていない。
EIOPAは、全体としては「投資方針原則は、日常の非公式な監督や正式な検査の際に、年金基金の投資方針やリスクの把握、あるいは法令順守状況をチェックするツールとして、主に使用されている。」と結論している。投資方針原則の内容に関する規制は国によって違いがあり、今のところ、IORP指令における基準への細則として、各国で定められた方針に拠るとのことである。
この実態の把握を受け、年金基金の実務負担を緩和する目的も含め、8つの最善策が提示され、3つの推奨アクションが各国監督者に提示されている。
まず、8つの最善策とされるものであるが、以下のようなものである。
【投資方針原則の内容に関する支援に関して】
1. 多数の年金基金や分離勘定を監督する際には、監督者のウェブサイト上に、年金基金がアクセス可能な、投資方針原則についての「よくある質問」(FAQs)を置いておくこと
【コンプライアンス検証のためのより効果的なプロセスに関して】
2. 通常の投資方針原則を提出する義務がある多数の年金基金をもつ各国監督者は、年金基金に自動リマインダーを発行することにより、適時に投資方針原則を提出するかどうか監視するのはもちろんだが、ウェブ上の一箇所に、投資方針原則とそれに付随する監督文書を厳重に管理・蓄積し、年金基金がアクセスできる方法を用いること
3. 監督にあたって投資方針原則を要求し、利用する時には、監督者は投資方針原則の定性評価の一部としてチェックリストを作成し、それを適用すること
4. 監督にあたって投資方針原則を要求し、利用する時には、オフサイトまたは正式検査の間、年金基金の投資プロセスのガバナンス上のチェックを実施すること
【リスクの特定に関して】
5. 定量的データを収集する多数の年金基金を監督する各国監督者は、投資上限、リスクの特定、正式検査への選択を確認する目的で、オンラインデータによるデータ収集を行なうことを投資方針原則の中におくこと
6. 監督における、部門別・テーマ別の分析において、リスクを特定する際には、投資方針原則の中にある定量的データを用いること
7. 定量的データを用いる監督者は、投資方針原則の中にリスクを特定する目的で、年金基金のリスクプロファイルにアクセスする権限をおくこと
8. 投資方針原則を、正式検査の選択基準のひとつとして使用すること