中国経済:1-9月期を総括した上で2017年に向けた注目ポイントを探る~住宅、民間投資、自動車が焦点に

2016年10月28日

(三尾 幸吉郎)

5.2017年に向けての注目点

2016年1-9月期の中国経済を総括すると、消費は自動車販売の好調に支えられて堅調だったものの、製造業の投資に勢いは無くインフラ投資は息切れ気味となり、投資の減速傾向に歯止めが掛からなかった。2017年に向けての中国経済は以下3点が注目ポイントといえるだろう。

第一に住宅販売・建設の動向である。9月の住宅販売面積を、公表データを元に当研究所で単月の動きを推定したところ前年同月比35.3%増(推定)と好調を維持したものの、新規着工面積は同17.7%減(推定)と大きく落ち込んだ(図表-13)。2017年に向けては金融政策の重点が住宅バブル退治に移り、購入規制が強化されるとともに住宅ローン管理も強化されるため住宅販売への影響は避けられない。また、新規着工の落ち込みが続けば住宅建設も鈍化する可能性が高い。
第二に民間企業の投資動向である。民間企業による投資は、2016年1-9月期に前年同期比2.5%増と大きく減速、特に5-7月には前年割れに落ち込んだ(図表-14)。その後、中国政府が行政手続きの簡素化、公共事業や民生分野での参入障壁の解消、資金調達面での支援などを打ち出したことで、8月以降は小幅ながらもプラスに転じた。但し、国有企業改革が進まない中で、民間企業が新たな投資分野を開拓するのは容易ではないため、民間企業の投資動向は引き続き要注意だろう。

第三に自動車販売の行方である。2016年1-9月期の自動車販売(台数)は前年同期比13.2%増と大きく加速、特に7月以降は2割超の高い増加率を示して消費の堅調を支えた。自動車販売が高い伸びを示している背景には昨年10月に開始された小型車減税(排気量1.6L以下)がある。従って、2017年に向けては2016年末が期限とされる小型車減税の延長の有無が注目される。中国自動車工業協会は、延長が無ければ2017年は前年比2%程度の伸びに留まるとの見方を示している。
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