不動産価格サイクルの先行的指標(2016年)~大半の指標がピークアウトを示唆~

2016年10月13日

(増宮 守)

1.はじめに

2015年下期に中国経済の失速懸念などを背景とした急激な株価下落、円高がみられて以降、金融市場では不安定な動きが続いている。一方、取引価格動向の把握が難しい不動産投資市場では、価格下落は確認されず、マイナス金利政策も導入されたことから、依然としてアベノミクス以降の価格上昇が継続しているとの見方が多い。

このように金融市場と不動産投資市場で隔たりが感じられる中、本稿では、不動産価格サイクルの現状を先行的な指標を用いて確認し、今後の不動産価格見通しの参考としたい。
 

2.不動産価格データ

2.不動産価格データ

まず、不動産価格の現状を公表データで確認する。不動産価格に関しては、従来から鑑定評価額ベースの価格指数(図表-1)、および投資家アンケートベースの期待利回り(図表-2)が公表されているが、これらは実際の取引動向に遅行する性質があるため、現在のところ価格上昇および利回りの低下が継続している。
また、2012年から、実際の取引ベースの価格指数として中古マンション価格指数(リピートセールス法)が公表されているが(図表-3)、これについても現在まで価格下落は確認されていない。マンション市場では、実需による取得が大半を占めており、取得者は今後の価格見通しよりも取得条件を重視する傾向がある。当面、低金利のもと有利な取得条件が続くとみられ、マンション市場での価格下落はオフィスなどの不動産投資市場に遅れると考えられる。
一方、2016年3月から商業用不動産(オフィス、商業店舗などを包括)を対象とした取引ベースの価格指数(ヘドニック法)も公表されるようになった(図表-4)。鑑定評価額に比べ、実際の取引価格の推移は変動が大きく、直近の2016年第2四半期時点、南関東ではオフィスおよび住宅価格は高止まりしているものの、商業店舗価格の頭打ちが顕著となっている。
このように、取引ベースの価格指数の公表により、以前より早期に不動産価格動向の把握が可能となった。ただし、これらの取引ベースの価格指数の直近値は、3~8ヶ月前2の取引を反映したものである。また、取引価格の把握は重要なものの、株価同様、過去の価格推移の把握と将来の見通しは異なる。以下では、今後の不動産価格を見通す上で参考となる各指標について確認していく。
 
2 四半期分を3ヵ月後に公表するため、直近値は更新直後に3~5ヶ月前、更新直前では6~8ヶ月前の取引を反映。
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