またリオ市では、2015年の後半にオリンピック・パラリンピックの文化プログラムの公募を行って資金的な支援を実施した。リオ市の資料によれば、その概要は次のとおりである
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応募総数は1,078件で採択は153件。その内訳は、公的機関が26件、民間機関が23件、ポピュラー・シーズンが25件、個別事業へのサポートが68件、芸術へのアクセスの支援が11件となっている。5~10万レアル(約160~310万円)の範囲で、少なくとも130件の事業に総額1,000万レアル(約3億1,000万円)が支給された。オリンピック開催中には1日当たり131件、合計で2,228件、パラリンピック開催中には1日当たり109件、合計1,306件の文化イベントを実施するという内容になっている
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文化パスポートはこれらリオ市が支援する事業に加え、民間も含む文化施設が対象になっており、パスポートには博物館・美術館52、アリーナ等14、文化センター10、図書館11、プラネタリウム1、劇場12のリストが掲載されている。美術館や劇場にとっては、入場料収入が減ることになるが、来場者数が増えれば、物販や飲食の収入にも結びつき、結果的に収入増になるという戦略だ。
文化パスポートの目的は、市民の文化鑑賞を促進することで、ブラジルの27州すべてから登録があったことからもその目的はある程度達成されたはずだ、というのがリオ市文化局の見解だ。
なお、文化パスポートにはリオ2016大会のエンブレムが掲載されており、リオ市は組織委員会の了解を得て使用したとのことだった。表紙にはオリンピックカラーをイメージさせるデザインが施されており、当初は「オリンピック文化パスポート」という名称を予定していたが、結果的にオリンピックという用語は使えなかったそうである。
1 現地での調査は太下義之氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)と共同で実施した。
3 The Rio Times, Mariko-Mori’s Olympic-Themed Installation in Rio State, 2016.9.9
4 この作品が文化省の「アート・モニュメント・ブラジル2016・オリンピック2016」の一部であるかどうかは不明。
5 高橋ジョー「いま、ブラジルは世界に向けてアートを発信する」アートスケープ(2016年8月1日号)
6 高橋ジョー氏へのインタビューに基づく。
7 Levantamento da programacao culturalnas Olimpiadas e Paralimpiadas(オリンピック及びパラリンピックの文化プログラムに関する調査)
8 1件の事業で複数日もしくは複数回の文化イベントが実施された。