中国大型連休、海外旅行は20~30歳代のスマホ世代が主流に

2016年10月05日

(片山 ゆき) 中国・アジア保険事情

政府の施策はさることながら、訪日中国人旅行客の消費意向やその変化は目まぐるしい。主流となる20~30代は中国の高度経済成長の中で育ち、ITやインターネットが生活の重要なツールとして定着しているM世代(ミレニアル世代)が多くを占める。また、一人っ子政策下で生まれた彼らは、自身の価値観や個性を大切にする傾向がある。訪日のリピーターも多いとなると、今後、スマホやタブレットを使って自身の興味や趣味をベースに旅行を組み立てたり、その日の気分で行先を変えたりなど、個人旅行で、日本ならではの体験によって旅行の満足度を上げる動きも多くなるであろう。図表3を見ると、次回の訪日旅行でしたいこととして、ショッピング、日本食、自然・景勝地観光などはベースとしてあるが、日本の四季の体感(花見・紅葉・雪等)、スキー・スノーボード、日本の歴史・伝統文化体験、日本の日常生活体験が期待値として高く挙がっている点からも、「モノ」から「コト」への移行は明確である。彼らにとって、最新家電や高額機器などの「モノ」は、生活においてある程度普及している。購入するとしても帰国してネットで買う方が便利だし、日本以外でも買えるという感覚であろう。
今後、こういったM世代の需要を取り込むためにも、Wifiといったネット環境の整備は当然のことながら、SNSやネットによる細かな情報発信、中国国内で日常的に使われているスマホを介したネット決済の整備などがより重要になるであろう。個人旅行が増加すれば、当然、目的地までの地図や交通手段、各種予約などネットを活用しながらの旅行となり、消費はより少額化、分散化されることが考えられる(図表4)。自身の経験、その場の光景はすぐ本人のSNS上にアップされ、その情報は瞬時に拡散する。経験した感動やサービスの満足度が高く、多くの共感を得ることができれば、場所に限らず旅行客は増加するであろう。

日本観光庁の発表によると、2015年の中国からの訪日旅行客は499万人。海外からの訪日旅行客全体の25%と国・地域別では最も多い。一方、中国においてパスポートを所有する人は国民全体のわずか5%と言われている。これまでの訪日旅行客の急増や「爆買」を含む第一波にとどまらず、今後の第二、第三の波を考えれば、早急に新たな対応が必要だ。

保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき(かたやま ゆき)

研究領域:保険

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴

【職歴】
 2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
 (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
 ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
 (2019年度・2020年度・2023年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
 ・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
 日本保険学会、社会政策学会、他
 博士(学術)

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