低金利や相続税対策などによる活況の一方、不動産賃貸市場の一部に頭打ち感~不動産クォータリー・レビュー2016年第2四半期~

2016年08月02日

(竹内 一雅)

3.住宅着工と住宅販売市場 

住宅着工戸数は2016年に入ってから大きく増加し、5月と6月には年率換算で100万戸を上回った(図表-9)。住宅着工の増加は、特に、低金利や相続税対策に伴うアパート等の貸家着工の増加に支えられている3。なお、5月の着工戸数の増加には消費増税前の駆け込み需要が一部含まれると言われていたが、消費増税時期の延期決定後の6月も引き続き高水準の着工が続いている。

活発な住宅着工の一方、首都圏の分譲マンションの発売戸数は低迷が続いている(図表-10)。不動産経済研究所によると、2016年上半期の発売戸数は前年同期比▲19.8%で1992年以来24年ぶりの低水準となった。発売戸数の減少にもかかわらず、契約率は低下傾向にあり在庫戸数も最近の中では高水準に積みあがっている(図表-11)。これには、首都圏マンション価格の上昇も影響しているようだ(図表-12)。ただし、「億ションしか売れない」45といわれるように、高額物件では高い契約率が達成されている半面、高額物件以外では平均程度かそれ以下の契約率となっている(図表-13)。
 
3 TASによると、相続税対策に伴うアパートの建築増加で、首都圏のアパート(木造、軽量鉄骨造)の空室率(TVI:タス空室インデックス)は大幅に悪化し、空室率(TVI)は30%を上回る状況にある。特に、新築アパートの空室率(TVI)は、都区部、神奈川県、千葉県で70%を超えるという。TAS賃貸住宅市場レポート「首都圏版、関西圏・中京圏、福岡県版」2016年7月、日本経済新聞「アパート空室率急上昇」2016.6.1を参照のこと。
4 日経ヴェリタス2017年7月17日~23日号1面特集「億ションしか売れない」参照のこと。
5 東京カンテイによると首都圏の億ション分譲戸数はリーマンショックにより2009年に476戸まで減少したがその後増加が続き、2015年には1,569戸となっている。東京カンテイ「"億ション"最新事情(首都圏)」2016.5.10を参照のこと。
 

4.地価動向

4.地価動向

7月1日に国税庁から2016年路線価が公表され、全国平均は8年ぶりの上昇(前年比+0.2%)となった。地価が上昇したのは14道府県で全体の3割だった。都道府県県庁所在地の最高路線価の上昇率は、大阪の前年比+22.1%を筆頭に、東京、名古屋、札幌、仙台、金沢、広島、福岡などの大都市で同+10%以上の上昇だった。

野村アーバンネットが公表する首都圏の住宅地地価の変動率によると、2014年1月から11四半期連続で上昇が続いている(図表-14)。中心商業地の地価変動率は、住宅地に比べ上昇が顕著で、前年同期比の上昇率は、外苑前で+60.0%、渋谷で+39.5%、銀座で+15.9%だった(図表-15)。
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