1|全体的には一歩前進
いずれにしても、その具体的な内容はともかくも、ニューヨーク州がPBRを採択する方針を示したことは、保険業界にとって望ましいことである。
これで、未だ採択していない他の州等
1も採択していくことが想定され、米国の全ての管轄地域で、PBRが採択されることになっていくものと想定される。
このように、ニューヨーク州の方針変更により、米国全体が基本的には同じ原則的な考え方に立った方向に動き出したことで、PBRはその実効性ある実施に向けての新たな段階に進んでいくことを意味することになる。今後は実施に伴う各種の課題解決に向けて、着実に取り組んでいくことが重要になっていくものと思われる。
具体的には、今回のニューヨーク州のPBR採択方針の決定により、前々回の保険年金フォーカスで述べていた以下の5つの影響や課題のうちの「5|ニューヨーク州の採択動向とそれが保険会社に与える影響」については、一定程度は回避できることが見込まれることになった。
(PBR制度導入による影響と今後の課題(
前々回の保険年金フォーカスより)
1|「適正なサイズの責任準備金」の考え方には幅が存在
2|キャプティブ活用の魅力の減退
3|責任準備金積立額の軽減効果
4|新たなPBR制度と既存制度との並存による負荷の増加
5|ニューヨーク州の採択動向とそれが保険会社に与える影響
また、これらの影響や課題のうち「2|から4|」に関連する内容については、前述のFitchの報告書でも触れられているとおりである。
2|今後の最大の課題
今回のPBR制度の導入の最大の目標は、「生命保険商品のための責任準備金を決定する現在の定型的なアプローチを各契約の基礎にあるリスクをより密接に反映しているものに置き換えることによって、適正なサイズの責任準備金とする」ことにある。
その意味でも、今後は、上記の「1|「適正なサイズの責任準備金」の考え方には幅が存在」という点について、ニューヨーク州の対応も含めて、その具体的な取り扱いが最も大きな課題になってくるものと思われる。
このことが、Fitchの懸念に対する答えとなっていくことにもなる。
いずれにしても、PBRについては、それが今後どのような形で統一的にワークしていくことになるのか等について、米国の生命保険会社だけでなく、日本や欧州を含めた世界の生命保険会社が深い関心を持って注目している。
その意味で、ニューヨーク州を初めとする各州やNAICでの今後の検討の動向については、引き続き注視していくこととしたい。
1 NAICの情報によれば、55の州及び管轄地域(米国50州、アメリカ領サモア、アメリカ領ヴァージン諸島、コロンビア特別区、グアム、プエルトルコ)のうち、6月1日時点では、45州が採択済、アラスカ、マサチューセッツ、ペンシルバニア及びコロンビア特別区が採択予定、ニューヨーク、ワイオミング、アメリカ領サモア、アメリカ領ヴァージン諸島、グアム、プエルトルコが採択予定も示していない状況となっていた。