【6月米雇用統計】市場予想を大幅に上回る雇用増加も、4-6月期でみた雇用増加ペースは、前期から鈍化

2016年07月11日

(窪谷 浩) 米国経済

4.家計調査の詳細:労働力人口が3ヵ月ぶりに増加

家計調査のうち、6月の労働力人口は前月対比で+41.4万人(前月:▲45.8万人)と、3ヵ月ぶりに増加に転じた。内訳を見ると、就業者数が+6.7万人(前月:+2.6万人)と小幅ながら2ヵ月連続で増加したほか、失業者数が+34.7万人(前月: ▲48.4万人)と大幅な増加に転じたことが大きい。非労働力人口は▲19.1万人(前月:+66.4万人)と、こちらも3ヵ月ぶりに減少に転じており、漸く労働市場からの退出に歯止めがかかった。この結果、労働参加率は62.7%と、こちらも3ヵ月ぶりに上昇に転じた(図表5)。

一方、失業率は4.9%と前月から上昇したものの、前月の低下が職探しを諦めて労働市場から退出した人が増えた影響が大きく、労働市場の改善を意味するものではなかった(図表6)。6月の結果は逆に労働市場の改善に伴って再び労働市場に再参入する人が増えた結果であり、失業率の増加自体は労働市場の悪化を意味しない。
次に、6月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は、197.9万人(前月:188.5万人)となり、前月対比では+9.4万人(前月:▲17.8万人)と3ヵ月ぶりに増加に転じた。この結果、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは、25.8%(前月:25.1%)と前月から上昇した(図表7)。さらに、平均失業期間も27.7週(前月:26.7週)と、こちらも3ヵ月ぶりに悪化した。
 
最後に、周辺労働力人口(177.9万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(584.3万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4をみると、6月は9.6%(前月:9.7%)と、通常の失業率(U-3)の動きに反して前月から低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は5.0%ポイント(前月:4.7%ポイント)と、前月から▲0.3%ポイント縮小した。
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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